強制 ページ41
暫くして大勢の足音が聞こえて来た。十中八九彼らだろう。その足音はこの部屋の前で止まり、ノックがなされて扉が開いた。
「……久し振りだな、A。体の調子はどうだ」
「お陰様で、ゼン王子。また戻って来てしまいました」
「……ほんとにな。戻ってくるなら出ていくなよ、驚いただろう」
冗談交じりにそういうゼンさんの後ろには木々さんとミツヒデさん、少し離れたところにオビさんがいた。彼は私と目が合うと静かに目を伏せた。
「全く、出ていくにも一言くらいくれても良かっただろう。それに金銭も一切持っていかないとはな。悪いがそこらでのたれ死んでても困るから探し出してしまったぞ」
「…スイマセン」
「はは、本当に心配したんだぞ。Aなら死にかねないと思ってたしな」
「…殺さないで、くださいよ…ミツヒデさん」
「…無事で良かった。心配させるのはもう、これきりにして」
「ごめん、木々さん…気を付けマス」
こんなに迷惑をかけたのにもかかわらず、彼らはお咎めなしに受け入れてくれるらしい。人が良すぎるぞ、クラリネス。だけど、私はそれに救われているのが事実だ。
何でこんなところに来ちゃったんだろって思ってた時期もあった。でも今なら言える、私、ここに来て本当に良かった。神様の悪戯であれ、只の偶然であれ、私はこれを運命と呼びたい。
「…今更ですが、ご迷惑をおかけしました。…こんな体で、正直自分も怖かったんです。私が私じゃない気がして。…皆さんは、こんな私でも、また、受け入れてくれますか」
「…お前のその体質には驚いたが、存在の確証が欲しいなら俺たちが与えてやれる。A、お前の居場所はここにあるぞ」
「…！」
「今丁度だなあ、第二王子付伝令役という役柄が空いていた筈だったが。なあ木々？」
「そうだね。元オビの役職だったけど今は騎士様だから」
「…ということだ。どうだ、A。お前、俺たちと一緒に働く気は無いか？ああ、勿論これは強制じゃないけどな。…王子様からのありがたい提案だ」
そういうゼンさんに私は驚愕した後思い切り吹き出す。そんなの、断るなって言ってるようなものじゃない。そして追い討ちをかけるように今まで黙っていたオビさんが私に声を掛ける。
「そうだ、それに俺まだアンタに教えてないことたくさんあるんだよねえ。…戻って来なよ。俺もそれを、願ってる」
嗚咽が漏れそうになるのを抑えた。どこまでも優しい世界。私はここを、守りたい。
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紗夜(プロフ) - 何回も読んで、もう文章覚えてきたけど、大好き。 (2020年1月3日 1時) (
レス) id: 17bb863b6a (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - Hinanoさん» こちらこそコメントありがとうございます！！！キュンキュンして頂けたでしょうか！？そう言って頂けて嬉しい限りです...ぜひとも続編もよろしくお願いします！ (2019年7月30日 13時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
Hinano(プロフ) - 本当に本当に本当に素敵なお話でした…吹き出しちゃうくらい面白くて、でもきゅんきゅんして…素敵な時間をどうもありがとうございました！ (2018年6月25日 7時) (レス) id: 853b5b9878 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - ちぎょさん» ちぎょさん、コメントありがとうございます！割と本気で泣きそうになりました！笑私も赤髪のキャラ皆好きで、個性を大切にしたいと思っていたので、そう言って頂けて本当に嬉しいです。こちらこそ、沢山のお言葉にとても励まされました！リクエスト、待っています！笑 (2018年4月29日 19時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - すみませんふざけましたが本当に。直接伝えたいなあ、こんなに素晴らしいお話を書いてくれてありがとうございました！！続編のリクエスト、ちょっとじっくり考えます笑。長々とすみませんでした。 (2018年4月29日 13時) (レス) id: 2a62607b53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フルリ | 作成日時：2018年4月16日 9時
