赤髪 ページ40
あの後、どうやら私は気絶したらしい。気がついたらまた医務室のベッドの上だった。体のあちこちの擦り傷は丁寧に処置され、一番重傷であっただろう左の前腕は新しい包帯に取り替えられている。きっと医務室長か、白雪がやってくれたんだろう。…数日もしないうちに帰ってきちゃったなあ、私。
どうにもここからは離れられない運命のようだ。再び目を瞑るとドアが開く音がした。それに目を開け様子を伺っていると、数日ぶりの綺麗な赤髪を靡かせた白雪がベッドまで歩いてきていた。
「あ！A…っ！起きたんだね！？」
「えっあっハイ起きました！」
「良かった…本当に、心配してたんだよ。…戻ってきてくれて、ありがとう。A」
そんな、お礼を言うのはこちらではないだろうか。「傷の手当て、ありがとう」と言うと彼女は涙ぐみながらにこりと笑った。
「…あのね、正直に言って欲しい。Aは、私たちのところにいるのが嫌だった？」
その質問に私はこんなにも私のことを思ってくれていた人たちがいるのだと、改めて知らしめされた。申し訳なさでいっぱいになる。違うの、これは私のただのエゴだっただけの話。貴女がそんな顔をする必要はないの。
「…白雪、私は自分の意思でここに戻って来たよ」
「…！」
「確かに私はオビさんとの勝負に負けて連れてこられたように見えるかもしれない。だけど、私はここに戻って来たくなかったらこの世にはいないと思う。彼はチャンスをくれただけ。最後に決めたのは、私。
…皆と、また一緒に過ごすことを夢見てしまったから」
泣きそうに震える声を抑えて最後まで自分の言葉で白雪にそう伝える。彼女たちは私に嘘偽りなく、暖かな言葉をくれていたんだ。それじゃあ私もそれに誠実に返すことが道理だ、最後に何も言わず逃げるなんて卑怯なことをしてはいけなかった。…黙ってたら何も伝わらない。
その言葉を聞いて安心したような白雪は私に抱きついた。突然のことに驚くが、彼女が嗚咽を漏らしていることに気づいて抱きしめ返す。私の為に涙を流してくれる人がいる。それは、とっても幸せなことじゃないだろうか。
釣られ泣きをしてしまった私は、嗚咽を漏らさないように歯を食いしばって静かに彼女の赤髪を濃い色に染めた。
「す、すみません…」
「や、こちらこそごめんね。…ありがとう、白雪。貴女がいてくれてよかった」
「…！うん…！」
ゼンたちを呼んでくるね、と出て行った彼女を見つめる。さあ本番だ。
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紗夜(プロフ) - 何回も読んで、もう文章覚えてきたけど、大好き。 (2020年1月3日 1時) (
レス) id: 17bb863b6a (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - Hinanoさん» こちらこそコメントありがとうございます！！！キュンキュンして頂けたでしょうか！？そう言って頂けて嬉しい限りです...ぜひとも続編もよろしくお願いします！ (2019年7月30日 13時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
Hinano(プロフ) - 本当に本当に本当に素敵なお話でした…吹き出しちゃうくらい面白くて、でもきゅんきゅんして…素敵な時間をどうもありがとうございました！ (2018年6月25日 7時) (レス) id: 853b5b9878 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - ちぎょさん» ちぎょさん、コメントありがとうございます！割と本気で泣きそうになりました！笑私も赤髪のキャラ皆好きで、個性を大切にしたいと思っていたので、そう言って頂けて本当に嬉しいです。こちらこそ、沢山のお言葉にとても励まされました！リクエスト、待っています！笑 (2018年4月29日 19時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - すみませんふざけましたが本当に。直接伝えたいなあ、こんなに素晴らしいお話を書いてくれてありがとうございました！！続編のリクエスト、ちょっとじっくり考えます笑。長々とすみませんでした。 (2018年4月29日 13時) (レス) id: 2a62607b53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フルリ | 作成日時：2018年4月16日 9時
