策士 ページ37
「この鳥は王宮だと主と少人数の人しか資格を持ってないからねえ。それに、アンタが思い出も捨てるとか言ってそれも捨てちゃってたら何も意味なかったけど。良かったよ、大事にしてくれてるみたいで」
「…」
あのオビさんと食事をした日に言っていた「ずっと持っといてね」という言葉にはこれを見越して、そんな意味も含めて言っていたのか？そうだとしたらとんでもなく先を読んでいる人だ、こんな人に敵うはずないじゃんか。
全て彼の思い通りにいっているみたいで納得いかず、歯をくいしばる。なんで？どこから彼は気付いていた？私が思い出したのはあのあと夕日を見てからだ。その前にこの言葉をかけた彼は、いつから…？
「さ、お喋りはおしまいだ。知りたいことは知れただろう？」
「…また新たな謎が増えましたけどね」
「そうかい？それじゃそれもこのあと教えてあげるよ…大人しく、俺に捕まってくれたらね」
その言葉に後ずさっていた足を止める。バレていたか。どんなに暗くてもやっぱり彼の目は誤魔化せないらしい。
「…どうして今更、引き留めるんですか」
あの時は、引き留めなかったくせに。そう言うと彼は目を丸くして笑った。
「あ、ごめんごめん。それ主にも言われたんだよねー。やっぱ寂しかった？」
「なっ！？さ、寂しくなんか…！」
「ま、それが狙いでもあったんだけど。アンタ、この道中で何回俺たちのこと思い出した？」
そう言われてハッとする。碌に礼もせずに飛び出して来てしまった王宮の皆を、未練がましくタラタラと何回も思い出してしまった。言葉が詰まる、どこまで彼は策士なんだ。
「死ねるか分かんないって言ってたけど、栄養失調で倒れるくらいだ、血液不足になったら死ぬに決まってる。いつ消えるか分からないのが怖いなら、自ら命を絶つ選択肢もあった筈だ。それをしなかったのはさ…やっぱりまだ、希望を捨て切れてはいないんだろ？」
…目を伏せる。そうだ、心の何処かではまだ皆と過ごしていたいと叫んでいた。何故それがいけないのか。…それは彼らの悲しい顔を最後に見たくないから。自意識過剰かも知れないが、恐らく私が目の前で消えたら彼らは悲しみの表情を浮かべるだろう。…少し過ごした時間で分かる、彼らはそれが出来る人たちだ。というか寧ろ笑顔だったら逆に私が悲しい。
どこまでも自分が嫌になる。結局のところ、私は自分に甘いのだ。希望に、彼らに縋り付いて生き延びている。
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紗夜(プロフ) - 何回も読んで、もう文章覚えてきたけど、大好き。 (2020年1月3日 1時) (
レス) id: 17bb863b6a (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - Hinanoさん» こちらこそコメントありがとうございます！！！キュンキュンして頂けたでしょうか！？そう言って頂けて嬉しい限りです...ぜひとも続編もよろしくお願いします！ (2019年7月30日 13時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
Hinano(プロフ) - 本当に本当に本当に素敵なお話でした…吹き出しちゃうくらい面白くて、でもきゅんきゅんして…素敵な時間をどうもありがとうございました！ (2018年6月25日 7時) (レス) id: 853b5b9878 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - ちぎょさん» ちぎょさん、コメントありがとうございます！割と本気で泣きそうになりました！笑私も赤髪のキャラ皆好きで、個性を大切にしたいと思っていたので、そう言って頂けて本当に嬉しいです。こちらこそ、沢山のお言葉にとても励まされました！リクエスト、待っています！笑 (2018年4月29日 19時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - すみませんふざけましたが本当に。直接伝えたいなあ、こんなに素晴らしいお話を書いてくれてありがとうございました！！続編のリクエスト、ちょっとじっくり考えます笑。長々とすみませんでした。 (2018年4月29日 13時) (レス) id: 2a62607b53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フルリ | 作成日時：2018年4月16日 9時
