宝石 ページ18
「何で謝るの？」
「え？今紅茶に髪の毛入りそうだったから持ってくれたんじゃないんですか？」
「……あ、いや」
珍しく歯切れ悪く否定する彼に私も不思議になる。すり、と髪の毛を指先で弄ばれて直接私の体には触れていない筈なのに、何だか変な気分になる。そして日差しにその赤紫色の部分を照らした。
「前も思ってたけど」
「…」
「綺麗だよね、アンタのこの髪。何かの宝石みたいだ」
その言葉には、と時が止まる。一瞬の沈黙の後「なんてね」と言った彼を私は許さない。本気にしたじゃんかよ。だけどまだ指先で弄るのをやめない彼に私は中途半端な姿勢で固まる。どう、したらいいんだこの状況。
すると突然彼が片手で手刀を振り下ろした。私は反応は出来たのだが髪の毛は捕まっているし、少し惚けていたのもあってそれをもろに食らう。軽くだったので痛くはないがまあ驚いた。
「な、何すんですかいきなり」
「…いや、隙だらけだなって」
「え…」
パッと手を離しそんなんじゃいつかやられちゃうよ、とけらけら笑った。そうさせたのはあんたでしょーが、と言いたいが何も言えずに押し黙る。
「…女の子は隙がある方が可愛いってガラクさんが言ってたもので」
「あの人が？あはは、確かにまあ確かに隙がある子は男にとって絶好のエサではあるよね」
「エサ…」
思っていた単語と違う言葉が聞こえてそうなのか、と少し落胆する。あんたは野生動物ですか、と言うと「よく言われる」と肩を竦めながら言った。
「可愛いとは思わなかったですか」
「んー特に思わなかったねえ」
「そこはお世辞でも言いましょうよ…」
「生憎そういうのは苦手なもんでね。ただ今ならやれるとは思った」
「だから野生動物ですかって…」
「俺が野生動物ならアンタは今頃俺の腹の中だね」
フォークの先を笑顔で私に向け、またアップルパイを切り崩して口に運ぶ。美味しそうに食べるその様子に私も釣られるようにして口に含んだ。うん美味しい、我ながら良い出来だ。
もぐもぐと食べながら目の前の彼のことを考える。あれもダメ、これもダメ、挙げ句の果てには隙を見せたら攻撃される始末だ。これは普通の反応ではないだろ…。つまり彼は一般的な方法では折れてくれないらしい。じゃあ突飛もない作戦って何だ…？と考えて見ても一般人の私には思い付く筈もなく。
ただ好きって言って貰えたら嬉しいんだけどなあ。そう言うと「甘いねえ」と言って彼はそれから口を閉ざした。
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紗夜(プロフ) - 何回も読んで、もう文章覚えてきたけど、大好き。 (2020年1月3日 1時) (
レス) id: 17bb863b6a (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - Hinanoさん» こちらこそコメントありがとうございます！！！キュンキュンして頂けたでしょうか！？そう言って頂けて嬉しい限りです...ぜひとも続編もよろしくお願いします！ (2019年7月30日 13時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
Hinano(プロフ) - 本当に本当に本当に素敵なお話でした…吹き出しちゃうくらい面白くて、でもきゅんきゅんして…素敵な時間をどうもありがとうございました！ (2018年6月25日 7時) (レス) id: 853b5b9878 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - ちぎょさん» ちぎょさん、コメントありがとうございます！割と本気で泣きそうになりました！笑私も赤髪のキャラ皆好きで、個性を大切にしたいと思っていたので、そう言って頂けて本当に嬉しいです。こちらこそ、沢山のお言葉にとても励まされました！リクエスト、待っています！笑 (2018年4月29日 19時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - すみませんふざけましたが本当に。直接伝えたいなあ、こんなに素晴らしいお話を書いてくれてありがとうございました！！続編のリクエスト、ちょっとじっくり考えます笑。長々とすみませんでした。 (2018年4月29日 13時) (レス) id: 2a62607b53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フルリ | 作成日時：2018年4月16日 9時
