TRINKET -tkin- 《1》 (ページ7)

今日:19 hit、昨日:1 hit、合計:109,956 hit

07 ページ7

雄也side

居候させてもらって悪いから、なんて建前で
ただ海ってワードに釣られただけだけど。

俺は竜也さんの店を手伝うようになった。

休憩時間になるたびに棚に並ぶ雑貨を見る俺を
「乙女だな」って笑いながら…

竜也さんにはほんとによくしてもらってた。

.

だから今の暮らしが嫌だとは思わないのに…

宏太はこの仕事をあまり良く思っていない。

雄『俺、就職なんかできないし』

宏『分かんないだろ。俺の会社、紹介しようか？』

宏太は成績優秀で、運動神経もよくて、
そのままいい会社に就職して

親父の期待通りの" いい息子 "。

雄『それに…もう俺と親父は縁切ってるし』

宏『そうだけど』

親父とお袋が離婚したということを知ったのは
家を出てからしばらくしてから。

" お前がそうやって甘やかすから、
好き勝手にやるようになったんだろう "

親父がそう、お袋に睨みをきかすのを何度か
見たことがあったから
そんな驚くような事ではなかったけど…

俺のせいで、家族はバラバラになったんだって
落ち込んだのも事実。

宏太には、俺の気持ちなんか…

雄『でもまぁ考えとくわ笑』

そう言いたくなっては呑み込んで
適当に言葉を交わすようになったのは
いつからだろう。

きっと思ってるよりもずっと前からだ。

.