Op.6-20 ページ45
前方車両から抜けると、人影はあっという間になくなった。走るのが楽で助かる。
ふと小中学校の時の火事の合言葉「おかしも」を思い出した。今の私は「おかしも」の「も」である戻らないを、完全に破っているのだ。
降谷くんとひろくんにバレたら、めっちゃ怒られそう。
2人が怒っている姿を想像して「怖っ」と身震いし、身体を手で摩る。でも直ぐに、ひろくんは私の味方になってくれるか、と考えを改めた。
ひろくんは優しいのか甘いのか、大抵のことはおおらかな仏の様な精神で受けとめてくれる。
まさに神様、仏様、景光様だ。
「あった!」
目的のお手洗いに着いた私は、勢いよく扉を開け放ち化粧台のスマホへと駆け寄った。
そこには先程と変わらない様子で、私のスマートフォンが置いてある。
素早くそれを手に取り異常がないことを確認すると、安堵から大きな脱力感を感じた。まるで我が子のようにそれを優しく抱きしめる。
「もう忘れないからね」
そう言って、よしよしと無機質な端末を撫でた。
そして今度こそきちんと鞄に入れたのを確認し、半端に開いている扉の取手に手をかけた。
しかし、次の動作に移れない。
この近くに誰かいる気がするのだ。
多分…………足音が聞こえた。
ぴたっとその場で固まっている私の不安は、次の瞬間確信へと変わった。
「さすがヘルエンジェルの娘さんだ。よく似てらっしゃる」
確かに聞こえた。人の声だ。
やはり近くに人がいるのだ。恐らく8号車の入り口付近に。
でもこの声って…………………………
安室透じゃん。
頭の中で誰がいるのか分かった瞬間、私はホッと胸を撫で下ろした。知らない人だったら、それこそまた事件かもしれない。
それと同時に、何をやっているのだろうと疑問が生じた。
さすがヘルエンジェルの娘さんだ。よく似てらっしゃる。
その部分しか上手く聞き取れなかったが、もう1人誰かがいるのは確かだ。
それに、この周囲を覆う緊張感。
ステージ袖のそれとは全く違う、少し不穏な感じ。灰色に漂う煙が余計と怪しい雰囲気を作り出している。
バレない様に、覗くだけなら。
私は己の好奇心に負け、ゆっくりゆっくり息を殺しながら、8号車にいるであろう安室透の見える位置へと身体を進めた。
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夜空 -Night Sky-(プロフ) - 8号車に近づくな...怒られる原因増えたよ() (2020年7月5日 18時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - ぺんとのーとさん» はい!楽しみにしてます!!! (2020年6月26日 22時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
ぺんとのーと(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» いつもコメントありがとうございます!私も書いてて切なくなりました……物語もそろそろ本格的に動きだすと思うので是非お楽しみください! (2020年6月26日 19時) (レス) id: cb2d29bece (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - みんな居ないんだよぉおおおお(泣) (2020年6月26日 8時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
ぺんとのーと(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます。訂正させていただきました。 (2020年5月31日 18時) (レス) id: cb2d29bece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺんとのーと | 作成日時:2020年5月13日 17時