Op.5-5 ページ25
私は大きく深呼吸して身体を正面に向けた。
そしてキッと睨みつける。
「別に、どうもしてません」
冷静に落ち着いた口調で言った。
歩道にいるので、なるべく感情的にならないよう自分を抑えつける。
頭の中では、彼の顔を引っ叩いてその無理矢理な笑顔を剥がすシュミレーション。指先では、この前テレビでやっていた嫌いな人を遠ざけるおまじない。
しっかり対安室透対策を行っていた。
そんなこと露知らず、彼は「そうですか」とだけ言って、微笑みながら私を見つめてくる。
………………何の時間……これ。
相手の出方を警戒すること30秒。
あっちは何も言ってこない。
これでは、私が一方的に対抗心を燃やしている格好悪い奴ではないか。
現に今、敵を前に牙を剥いて唸るライオンと、それをよそにのんびり伸びをする猫が対峙しているような状況だ。
自分の子供っぽい行動を意識して、冷静を保っていた顔が少し熱くなる。
「そ、それじゃあ、私はこれで」
この無言の時間に耐えきれなくなった私は、それだけ言って、足早に彼の横を通り過ぎた。
「Aさん、あの、」
急に彼が私を呼び止める。
予想外のことに身体をビクッとさせ、再び鋭い目つきで彼を見た。
「…………何ですか」
「……ピアス」
「ピアス?」
「そのピアス、とても綺麗でよくお似合いなのですが…………あまり無理しないでくださいね」
そう言って優しいお兄さんのように微笑む彼。
一瞬何のことか分からずポカンと口を開けていたが、理解した途端私の顔はぶわっと赤く染まってしまった。
今耳につけているこのピアス、この前一目惚れして買ったものなのだが、素材が自分に合わなかったのだ。
しかしお気に入りのデザインだったので、多少耳が荒れてもいいやと思いつけていた。
頭の良い彼のことだ。
腫れている耳を見て、そこまで見通した上で私を気遣ってくれたのだろう。
自分の幼い考えがバレてしまったことに対して、羞恥を抱いた。
そしてもう一つ。
以前の降谷くんのように、私のことをしっかり見て変化に気付いてくれた。そして心配をしてくれた。
そのことが、とっても嬉しかったのだ。
「お、おお気遣い、ど……うも…………」
込み上げてくる羞恥とそれ以上の嬉しさが悟られないよう、ぷいっと顔を背け、なんとかお礼を言う。
そして今度こそ、急ぎ足でこの場を去った。
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夜空 -Night Sky-(プロフ) - 8号車に近づくな...怒られる原因増えたよ() (2020年7月5日 18時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - ぺんとのーとさん» はい!楽しみにしてます!!! (2020年6月26日 22時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
ぺんとのーと(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» いつもコメントありがとうございます!私も書いてて切なくなりました……物語もそろそろ本格的に動きだすと思うので是非お楽しみください! (2020年6月26日 19時) (レス) id: cb2d29bece (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - みんな居ないんだよぉおおおお(泣) (2020年6月26日 8時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
ぺんとのーと(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます。訂正させていただきました。 (2020年5月31日 18時) (レス) id: cb2d29bece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺんとのーと | 作成日時:2020年5月13日 17時