米花町の音楽家 (ページ12)

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Op.4-1「女子高生、そしてポアロ」ページ12

すると青い車に続き、赤い車、白い車、そしてバイクが疾風の如く次々に駆け抜けていった。

レースでもやってるのかなと呑気に目で追いかける私だったが、ガッシャンという大きな衝突音を聞いて動きを止めた。
距離があって詳しくは分からないが、事故が起こったらしい。

そりゃああれだけスピード出してたらそうなるよね。

他人事に思って歩き出そうとするも、再び衝撃的な絵が飛び込んでくる。
衝突した車から出てきた人を、バイクがぶっ飛ばしたのだ。

……事故じゃなくてドラマの撮影か。

そう納得した私は、野次馬に巻き込まれるのも嫌なので裏道を通って帰ることにした。

♦Op.4「女子高生、そしてポアロ」

遠くから聞こえる運動部の掛け声。

がさがさと音を立てて揺れる校庭の木々。

激しくなびく音楽室のカーテン。

花びらのように空中を舞う楽譜たち。

そして、その中で立ち尽くす私。

「やっちゃった………………」

先生になってから早数日。
音楽室が住処となりつつある私は、今日も放課後に棚の整理をしていた。

一通り掃除を終え、ボロボロの楽譜を縛る為の紐を探しにほんの少し教室を離れたのがダメだった。

今日一日中吹いていた強い風が、開けていた窓から音楽室を襲い見事この有り様である。
まるで台風が通った後みたい。

「…………はぁ。片付けるか……」

見なかったことにして立ち去るわけにもいかないので、散らばった楽譜を1枚1枚手に取る。
面倒くさい。

1人悲しく楽譜拾いをしていると2人の女子生徒が入ってきた。

「うわぁ。これまた酷い有り様ねぇ」
「ちょっと園子。ちゃんとノックしないと」

どうやら私がいることに気がついていないみたいだ。

「何か用ですか……ってこの間の黒帯の子！」

ピアノの下から這い出ると、面接の時に案内してくれた黒帯の女の子がいた。隣にはカチューシャを付けている子もいる。

「先生！？な、何、してるんですか……？そんな所で………………」

2人は予想だにしない場所からの私の登場に目をぱちぱちさせている。
こんな不審な教師がいたら私も同じ反応をするだろう。

「いろいろあって……………その後処理を……」
「な、なるほど…………」

私のざっくりとした回答とこの状況が結びついていないのか、若干引き気味に教室を見回す2人。

すると黒帯の子が何かを思い出したのか、ふと振り返る。