転生した 苺の王子は 鬼殺隊 7

弍佰 玖拾 玖 話 ページ21

莉犬side




夜になった





炭吉「もう…行かれるのですか？」

縁壱「ああ、すっかり日もくれてしまった」

炭吉「また遊びに来てください」

縁壱「…」





…分かっている
今、縁壱が返答に困っているのも

それになぜ、ここに来たのかも





莉犬「…縁壱」

縁壱「…」





今、俺はどんな顔をしているだろう
きっと笑顔で、泣きそうで、優しい顔をしている





縁壱「…ああ」





縁壱は、俺の顔を見て微笑んだ
そして、再び顔を上げた





縁壱「莉犬を、ここで預かってもらえないだろうか？」

炭吉「え…ええ。それはもちろん」

すやこ「子供たちも喜ぶわぁ」

炭吉「でも…いいんですか？」





縁壱は、始めから俺を預けるつもりでここに来たんだ
ここ最近、縁壱を狙う鬼が増えてきた


無惨が縁壱の命を狙っている証拠だ


俺が万が一にも捕まれば、また無惨の言いなりにされてしまう
それを避けるため、縁壱は俺と離れようと言うんだろう





縁壱「莉犬の寿命は長い」

莉犬「え…」

縁壱「私は長くても、もう100も生きられない。
私が死んだ後、莉犬が寂しくないように…お前たち一族の側にいさせてあげて欲しい」





縁壱…そんなこと、思ってたの
俺…鬼だよ…

どうして…そこまで…
ああ…頭が上手く回らない

伝えたいことがありすぎて、上手く言葉にできない
もう縁壱には会えないのに





縁壱「どうか…頼む」

炭吉「分かりました。責任をもって、預かります」

縁壱「ありがとう」





縁壱は、かがみ込んで、俺の右耳に触れた
縁壱の手が離れたところには、縁壱の耳飾りがあった





莉犬「これ…！」

縁壱「…」





……！

そうだね…
俺たちに言葉なんて必要なかった

家族…だもんね





莉犬「ありがとう」

縁壱「ああ」





縁壱は、もう片方の耳飾りを炭吉さんにあげて、背中を向けた

遠ざかっていく後ろ姿に、炭吉さんは涙を流しながら叫んだ





炭吉「よ…縁壱さん！後に繋ぎます！貴方に守られた命で…俺たちが！」

莉犬「炭吉さん…」

炭吉「この耳飾りも、日の呼吸も、莉犬くんも、後世に伝える！約束します！」





なぜだろうか
炭吉さんの必死な声に背中を押されて、俺も叫びたくなった

言葉のいらない家族に向けて、最後の一言を…
精一杯の、感謝の気持ちを…





莉犬「縁壱――――――!!
体に気をつけて!!長生きしろよ!!」





縁壱は、振り返り、俺たちに向けて手を振った
そして万年の笑みで一言





縁壱「ありがとう」

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