転生した 苺の王子は 鬼殺隊 7

弍佰 玖拾 伍 話 ページ16

莉犬side





俺と縁壱は、沈黙したまま山道を歩いた

俺は何も言えなかった
縁壱に、どんな言葉をかけたらいいのか分からなかった

そもそも、俺は言葉をかける資格すらないと思った






縁壱「莉犬に…申し訳がたたない」

莉犬「え…」





しばらくの沈黙の後…
縁壱から出た一言は、絞り出すような声だった






縁壱「莉犬が、うた を命懸けで守ってくれたのだと分かった。
だから私は、その…かけがえのない命を守っていこうと誓った…」

莉犬「！」

縁壱「誓ったのに…すまない」






俺がいなくなった原因…縁壱は分かっていたのか






莉犬「…謝らないで…縁壱は何も悪くない…」






やっとの思いで絞り出した声は…
縁壱に、そんな言葉しか与えられなかった






縁壱「私はおそらく、鬼舞辻無惨を倒すために、特別強く造られて生まれてきたのだと思う」

莉犬「…」

縁壱「しかし、私はしくじった。結局しくじってしまったのだ。
私がしくじったせいで、これからも多くの人の命が奪われる」






もう嫌だ…耳を塞いでしまいたい
縁壱が苦しむ声なんて…もう…






縁壱「…心苦しい」

莉犬「っ…」






聞きたくない






莉犬「…」






俺は何てことを…思ったんだ

縁壱が、1番深く傷ついているのに…







莉犬「っ…縁壱！」

縁壱「…？」






立ち止まって、大きく名前を呼んだ
俺の声を聞いた縁壱は、少し進んだところで振り返った


ずっと、誰かに俺の名前を呼んで欲しかった
でも…それ以上にもっと、俺も誰かの名前を呼びたかったんだ






莉犬「大丈夫だよ。この先も、鬼は俺が倒していく。100年後も…200年後も…ずっと…
だから、縁壱のせいで死ぬ人は1人もいないよ！」

縁壱「…」

莉犬「しくじったのは、俺も同じだよ。だから、俺が縁壱の分も背負って生きていく」

縁壱「それでは…」

莉犬「縁壱」






真剣な顔で、でも微笑むような笑顔で…
俺は、縁壱に思うありったけの言葉を伝えたい






莉犬「縁壱は、大切な人だから」

縁壱「！」

莉犬「縁壱には、今までたくさん助けてもらった。
だから…これでおあいこ、ね？」






一筋の涙が、縁壱の頬を伝って落ちた

俺はそれに気づかないフリをして、縁壱の背中をバシッと叩いた






莉犬「さっ！歩こう！今夜中にこの山超えるんだからね！」

縁壱「…うん」






縁壱は、涙で少しかすれた声で、まるで子供のような返事をした

俺は再び、それに気づかないフリをした

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