最初から嘘。

初対面？ ページ2

あーあ。

別に容姿に自信があるわけでもないし
堂前さんにどう映ってるかも分からない。
ほんまにこのひとときだけで、お別れかもしれん。

けど、すこしの下心を胸に。



…自分こんな変態やったっけ。


じーっと覗き込むような、堂前さんの細くて優しい目線が突き刺さってる。


…そんな見られたらしんどいですってほんと。

赤面するな。
目は剃らしたらあかん。

油断は、見せたらあかん。


ずっと好きやったなんて、素振りは全く見せないように。


スゥっと、彼が息を吸う音が聞こえた。
ゆっくり口を開いた堂前さん


堂「…ボーッと海眺めてはったから。
　 なんかすんません、急に声かけてしまって。」


「…いや。
　私こそ無愛想にすみません…。」

しおらしーく。返した。






ここは沖縄。

会社の慰安旅行でやってきたけど

同僚とは、仕事の話は流暢に話せるけど

沖縄をきゃっきゃ過ごせるほど特別仲もよくないし。

会社行事も午前中に終わって
午後からは自由時間。

とりあえず古宇利島の海辺でひとり。
寄せては返す波をボーッと眺めていた。


そこに、同じくお一人そうな

わたしの推し。


ロングコートダディの堂前さんと
プライベートで出会ったのはこれが最初の日。


運命ちゃうん？て思うやん

けどな。
堂前さんが一人で沖縄に来てるのは
知っててん。

腐れ縁の旧友・阪本匠伍と先週会ったとき。
いつもの小汚ない居酒屋で、
さっきまで焼き鳥が盛られてた、
今は茶色いタレだけが張り付いている皿に
串で線を描きながら言い放たれた一言


阪「てか堂前さんもさー沖縄行くんや〜て言いながら
　 歩いとったで。
　 俺一人で沖縄は無理やわ。何満喫せぇいうねん。
　
　 つか、お前会社で沖縄いくのいつや言うてたけ」

…はあ？
ほんまこの人大事なこと終盤に言うところほんま変わらん。変わらずうざい。

早よ言えばか！
そう呟きながら壁にもたれ掛かる

脱力感とふわふわした淡い期待で
自分でもよく分からんけど、テンションはめちゃめちゃ上がってる。


「来週の金曜から行くねんけど…どう？」




阪「…まじ？俺ほんまナイスちゃう？
　 俺みたいなん友達にもったこと一生感謝せえよ
　 ほんま」



堂前さんも同日の時間差で沖縄入りらしい。

ありがとう匠伍→←全部嘘です。

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