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『――そろそろ引っ越しの準備を始めなきゃね』
「荷物はそんなにないけど」と部屋にある本棚へ視線を送る。私の本はそこには無くて、どれもこれも横文字ばかりの彼の本が詰め込まれていた。
一冊とってペラペラとめくってみたことはあったが、私にはアルファベットで書かれているということしか分からない。
ちんぷんかんぷんになった私が本を上下左右と回転させているのを見ては、そうちゃんはいつもクツクツと面白がって笑う。決して小馬鹿にされている訳ではなく、無邪気に笑うから怒るに怒れないのだ。
『私、日本語しか話せないよ』
『それは良いね。そうしたら君があっちで愛を囁けるのは僕だけになる』
『もう、ふざけてばっかり』
「ははは」と白い歯を見せた彼は私をギュっと抱きしめる。30秒間ハグをすると、1日のストレスが3分の1解消されると言うが、そうちゃんのハグは放出よりも注入の方が合っていた。
まるで私の中に何かを注ぎ込むように抱きしめている。それが何物なのかは分からない。しかし、害毒物ではないことは確かだ。
『……本当に、ついてきてくれるの?』
『そう言ったでしょ』
『……そっか』
彼のこんなにも悲しそうな、寂しそうな顔を見たのは初めてだ。いつも笑っている彼は、ほんの一瞬だけ私に本当の素顔を見せた。
その表情に胸が締め付けられる。キリキリと、細い紐で締め付けられる心が寂寥を誘う。
『A、好きだよ』
彼の言葉は黯然銷魂のようで、そこに存在するはずの愛が、見え隠れしている気がした。
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ハル(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます!! 百年!笑笑 私死んじゃってますね笑笑 そう思うと半年ってあっという間ですね〜。半年後、ちょっとでも今より素敵になっていたら嬉しいです。またお会いしましょう! ありがとうございました!! (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ひなさん» ひなさん! ありがとうございます( ´ ∀`) 最後はちょっとばかり夢主をツンデレっぽくしちゃったので、どうかなー、と思っていたのですが感動的になっていたのなら嬉しいです! また半年後、ひなさんからのコメント待っててもいいですかね!? (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 銀皐月さん» ありがとー! 半年の前にスマホ買ったらおかえりも何もないんだけどね笑笑 でもここではお帰りになるのか! そしたらさっつんに言ってもらおうかな( ´ ∀`) 閲覧とコメントありがとうね。とても嬉しいです!!! (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うぃーさん» ありがとうございます!! そのシーンを書きたいがために作った作品といっても過言ではないので、そのシーンが印象的に残ってくださることがとても嬉しいです!! 半年後、またこうしてお会いできることを心よりお待ちしております( ´ ∀`) (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ピピコさん» うわ〜私めっちゃ感情描写を書くのが苦手なんですよ( ; ; ) なのでそう言ってもらえると嬉しいです、ありがとうございます!! 半年後にまた会えると嬉しいです( ´ ∀`) 閲覧とコメントをありがとうございました!! (2017年12月22日 15時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年11月14日 19時