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落ち着かない気持ちを紛らわすためにチャンネルを切り替えていると、ちょうどバラエティ番組がやっていたのでなんとなく見てみる。
テレビではご当地のゆるキャラが流行りの曲を踊る映像が流れていた。
「ゆるキャラってこんなこともするんだ」
緩んだ口元から白い犬歯を覗かせたのをまじまじと見つめてしまった。
文化祭で見た光景がフラッシュバックしたのは、そのときと同じ表情だったからだ。
「…こういうの見んの？」
「全然見るよ。面白いなぁって」
「ふーん、嫌いかと思ってた。お前普段テレビとか見なさそうだし」
「俺って家でなにしてると思われてんの？」
「趣味は？」
「読書とか映画鑑賞」
「うわ！ぽいわぁ〜、なんにも意外じゃない」
「なんだよ、なんか腹立つな」
そう言って北斗の視線はテレビに戻る。
機嫌を損ねてしまったようだけど、完全に嫌われたわけではない思う。
一瞬で飲み干してしまった麦茶をおかわりしようと立ち上がり、冷蔵庫から麦茶の入ったスリムジャグを取り出す。変に緊張しているせいか、さっきから無性に喉が渇く。
グラスを持って再びソファーに座ると、北斗は漫画の単行本がぎっしりと並んだ本棚をジッと見ていた。
メジャーな作品ばかりだし、特に珍しいのは置いていないはずだ。なにか興味を惹かれるものでもあったんだろうかと思っていたら、突然こっちを振り向いた。
その瞬間、非常に嫌な予感が全身を覆った。
言われたくないことを言われる、と耳を塞ぎたい衝動が湧き上がる。
それでも言葉は硬直した身体に、容赦なく降りかかってきた。
「樹甘いよ、こういうのはちゃんと隠さなきゃ」
表情の際どい格好をした派手なギャルと目が合い、頭を掻く手がピタリと固まる。北斗が手にしていたものはいわゆる"そういう"雑誌だ。
羞恥心は捨てて明るく振る舞うつもりだったのに、心臓は既にバクバクと焦り始めていた。
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続く (更新停止中)
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作者名：羽瀬 | 作成日時：2020年7月2日 1時
