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打ち上げも無事に終わり、家に着くまであと少しというところで、不意に頭上が光った。
頬が濡れる感触がして間もなく、雫がぽつぽつとアスファルトの地面に模様を作っていく。
近くの屋根がある建物に急いで駆け込んだため、そこまで濡れずに済んだものの、天気予報を見てみてもしばらくは止みそうにない。
どうするべきかと悩んでいるうちに雨は次第に強さを増して、暗黒の空もゴロゴロと音を立てて唸り始める。やっぱり酷くなる前に駆け出しておくべきだった。
しばらく無表情でスマホを眺めていれば、この土砂降りの中で傘を差しながら自転車を押す人が目の前を通った。
ちらりと一瞬だけ視線を向けられてしまい、硬直した。
まん丸の目で固まる俺と、同じくまん丸の目で固まる黒髪の男。
気づいてブレーキをかけた拍子に、黒くて柔らかそうな髪が揺れた。
「よぉ、偶然」
「なに？なんか用？」
なんだかよそよそしいような気がするけれど、今の俺にとっては救世主に見えた。
「え？それはその、状況的にほら」
「ほら？」
「だーかーらぁー、傘持ってないんだって」
「断っていい？」
「ちょっとくらい入れてくれてもよくねぇ？」
「このサイズの傘に二人も入れる余裕ねぇもん」
「大丈夫だって！いけるいける」
俺がそう言うと北斗はジーッと俺を睨んで、少し躊躇うような素振りを見せつつもこっちに歩み寄ってくる。
「傘は俺が持つわ」
「えぇ、怖っ。風強いから吹き飛ばされないようにちゃんと持ってよ」
「はいはい。わかってるって」
手前に傾けられた傘の中に、駆け足で入り込んだ。
雨の水滴が重力に従ってぽたぽたと落ちていく。
自転車のハンドルを握り締めた北斗が一歩ずつ歩き出すのを確認し、歩幅を合わせて水溜まりをなるべく踏まないよう慎重に歩いた。
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作者名：羽瀬 | 作成日時：2020年7月2日 1時
