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「みんなお疲れ様でしたー！乾杯！」
文化祭の打ち上げは焼肉屋で行われた。
文化祭実行委員の挨拶で各自ソフトドリンクの入ったグラスを軽くぶつけ合う。もちろん中身はノンアルコール。
仕切りのない座敷の部屋を二つ貸し切っているから一人一人の距離感が近く、全員いつもと違って私服だからか、側から見れば合コンのような光景だった。
注文していた料理が次々と並べられると、テーブルの上はすぐに埋まってきたため、肉を焼いたり料理を小皿に取り分ける。
めんどくさくてやらない仕事を率先してやってんだから、誰か少しくらいは褒めてくれてもいいんじゃないかと心の中で思っていれば、向かい側に座っていた一人の女子が俺に気づいて手伝ってくれた。
ニコッと微笑んだ彼女の緩く巻かれた髪。オフショルダーのトップスから出る華奢な肩といい、店前に集合したときに目に飛び込んできたデニムのショートパンツまでもが全部完璧にストライクだった。
好みバレてんのかなって、思わず店に入る前に慎太郎のこと後ろから小突いたりしちゃったくらい。
俺の中で"ギャル最強説"ってのがある。派手なファッションをしている女の子が料理している姿を見たら『お前その見た目で料理できんの！？』って嬉しくなるし、下手だとしても頑張ってたら可愛いってなる。
ヤンキーが捨て猫を助けたりしてたら途端に良いやつに見えるみたいな、あるあるだけど結局人間ってそういうギャップに弱い。
場の雰囲気もあって、いつもよりネジが緩んだりしているクラスメイトを見て笑っていたら、突然甘い匂いが俺の近くを横切った。
首を真横に動かすと、ぱっちりとした大きな目が思ったよりも近くにある。
さっき俺を手伝ってくれた、服装がストライクの彼女。
「樹くん、ここ座っても大丈夫？」
「あ、うん」
「ありがとう」
彼女は柔らかく微笑むものの、どこか落ち着かないようにも見える。
ちらちらと様子を窺って水を飲んだあと、彼女は少しの間を置いてからゆっくりと口を開いた。
「樹くんってさ、松村くんと仲良いの？」
予想もしていなかった問いかけに、余計な思考は底に沈んだ。
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作者名：羽瀬 | 作成日時：2020年7月2日 1時
