▽トライアングル 2▲【横倉】 (ページ15)

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⊿piece00 ( t.o ) 4 ページ15

◯大倉

「ねー、ただよし。まだ怒ってんの？」

何か俺に罪悪感を感じていたり、要望がある時、無意識に美菜子は、俺の事を下の名前で呼ぶ。

『別に？はよ乗って』

一昨日のシャープペンシルの件以来、美菜子がずっと俺の機嫌を伺っている。全く怒ってもないし、気にしてもないのに。

事ある毎に俺に気を遣う彼女の姿が、可笑しくて、ずっと怒ってる"フリ"を続けている。

俺の気待ちに気づかない美菜子への小さな意地悪だ。彼女の気を引けるのが嬉しかった。

「昨日も言ったけどさぁ、うち心配しなくても学校サボんないし、こっから駅まで近いしひとりで行けるよ？」

『ええよ、通り道やし。連れて行かなオカンうるさいし。』

本当はオカンに言われたからとかじゃなくて、俺が送りたいからで。ちょっとでも一緒に居たいなって。

「んー…じゃあ…頼みます」

バイクの後ろに跨り、美菜子は恐る恐る俺の腰に手を回す。ハンドルを握るとマフラーから噴き出したエンジン音が辺りに響き渡る。

『落ちんといてや』

腰のあたりに触れている部分が温かい。至近距離で、美菜子の香水の匂いが鼻を掠めて鼓動が早くなるのが自分でも分かった。