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この1週間はいつもよりあっという間に
過ぎ去ったように思える
気付けば約束の土曜日になっていた
昼間にアルバイトが入っていたため
待ち合わせは夕方にしてもらったのだけど
働いている間も
その事ばかりが気になって
上手く想いが伝えられるか
どんな言葉で伝えようか
そんなことを考えていたら
退勤時間を迎えていた
『お疲れ様です』
私はバイト仲間に声をかけ帰路についた
.
基本的に私の行動範囲はとても狭い
大学や最寄り駅には徒歩で行けるし、
バイト先も自転車で10分もかからない
そして、待ち合わせの公園も...
私の住むマンションの目の前
きっとこれは海人の優しさ
私はバイト帰り、そのまま公園へ向かい
ベンチへ1人腰掛けた
珍しく近所の子供の姿も無く
十数分置きにする電車の音だけが響いていた
どれくらい時間が経っただろう
「A」
再び私の名前を呼ぶ彼の声
もしかしたら、こう呼ばれるのも今日で最後かもな
なんて、先週の動揺が嘘みたいに
そんなことを考えていた
『海人』
私も、もう呼ぶことはないかもしれないその名前を
口にする
『私、海人のこと、ホントに好きだった』
過去形になった彼への思いを
私は、そのまま言葉にかえた
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作者名:きい | 作成日時:2020年4月25日 20時