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元太side
どうしたらいいか分からない
そう言葉を漏らした彼女は
お酒の力を借りながら
昨日の夜、そして今日の朝の出来事を
全て話してくれた
Aを苦しめていたのは元カレだった
正直、好きな人のそんな話は
あまり聞きたくなかった
だけど、今日会った時から
ずっと心ここに在らずなAを
無理して笑うAを見ているのは
辛かった
お酒が弱いのは分かっていたし
どんどん呂律が回らなくなっていくのにも気付いていたけど
全部吐き出させてあげたかった
介抱くらい、どんだけでもしてやる
Aが少しでも楽になるなら、それでいい
___忘れたいなら俺が全て忘れさせてやる
そんな言葉を今発するのは卑怯だから飲み込んだけど
本気でそう思う
『きょぉね、ここに来る前カナに言われたの...
自分のキモチ、確かめてこぉーいって』
『どぉゆう意味か、ぜんっぜんわかんなかったんらけど、
なんか...わかった気がする』
そう言うと、ずっと焦点の定まっていなかった彼女の瞳が
突然真っ直ぐ、俺を映した
ドクンッ、ドクンッ、と大きく波打つ心臓が五月蝿い
そんな俺を他所にAは再び口を開いた
『私の心の引っかかりは元太だな、って』
そう言ってフニャっとした笑顔を俺に向ける
お酒で火照ったその顔は妙に色っぽくて...
「、、、っ
ズルすぎでしょ...」
その瞬間俺の理性はどこかに吹っ飛んだ
気付いた時にはAの顔が目の前にあって
自分がキスをしたことに気が付いた
『キス魔だ...元太くん、酔ってるんですかぁ?』
Aは動揺することなくそう言った
彼女が酔っていて助かった
「...さぁ、どうだろうね?」
ズルい俺は、そんな返事で誤魔化した
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作者名:きい | 作成日時:2020年4月25日 20時