ゆめうつつ【１】 (ページ9)

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太陽くんの方を向いてとりあえずそう答えるも、当の草川さんは私を凝視しているのが感覚で伝わってくる。

「ね、草川さん。食堂行きますよね！今日は何食べますか？」

「……………あーうん。うどん食べたい気分……」

再度草川さんを見た私は話を合わせてもらえるよう必死に目で訴え、雰囲気で応じてくれた草川さんにものすごく感謝した。

「……そうなんや」

若干腑に落ちない感じを残しつつではあったけれど、飲み込んでくれた太陽くん。

「じゃあ、また連絡するわ」

「うん、またね」

そんな短い会話をして踵を返し、人混みに埋もれてく太陽くんの背中を見送る。

……それが見えなくなってから、恐る恐る視線を草川さんの方へ戻すと、案の定と言うべきか怪訝な顔で私を見下ろしていた。

「今の何。俺、何役にされたの」

「え……と、友達役……？」

「は？お前友達いないの？」

「いや、いるんですけど、そうじゃなくて。お昼ご飯を一緒に食べる人がいないっていうか」

「………………」

流れる沈黙のあと、

「じゃ、本当に俺と食べる？」

そう言って草川さんは少しだけ口元を緩める。

完全なる笑顔とは言えないけれど初めて見た柔らかい微笑みに、こんな顔できるんだ、と失礼ながら思ってしまった。

購買で惣菜パンと野菜ジュースを買う草川さんに続いて、私も昨日と同じくフルーツサンドとミルクティーを買う。

ひとりで下りてきた時点で食堂ではなく購買に買いに来たってことはなんとなく分かっていた。

うどんの気分だって、私に合わせてくれたことも。

階段を上がる草川さんの斜め後ろを着いていく。

「草川さん、どこで食べるんですか？」

「……お前その″草川さん″っていうの、やめろ」

「え？それ以外なんて呼べば……」

「拓弥でいいから。草川さんなんて呼ばれたことねーよ、なんか気持ち悪くて返事できない」

「なんですかその理由……じゃあ、拓弥さんで」

「うん。まぁよしとする」

そんなやりとりをしながら３年生の教室がある階を過ぎて、最上階まで階段を上りきった。

途中から察してはいたけどやっぱり目的地は屋上で、扉をキイと開ける拓弥さんの後ろ、私は向かい風に目を細めた。

「……遅いと思ったら後輩ちゃんナンパしてたの？」

だぼっとしたカーディガンを着たふわふわの巻き髪女子が突如目の前に現れて、私と拓弥さんを交互に見やる。

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