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不幸中の幸いと言うべきか分からないけど、あの日が金曜日でよかったと思う。
学校に行けばきっと彼女と笑う太陽くんを目の当たりにしなきゃいけなくて、失恋した翌日に早速となると、耐えられるメンタルは持ち合わせてないから。
土日は家に引き込もって、ひたすら料理や掃除をした。
それは気を病まないようにするための自己防衛だったけれど、耐えられないと分かっていたのなら、それなりに対処法を考えればよかった。
……そう反省したのは月曜日になってから。
「A、お昼食べよ」
お昼休みに入り、購買か食堂に行こうと教室を出ると太陽くんに出くわした。
驚いてフリーズした私は、太陽くんのいつも通りの笑顔にだんだん我に戻っていく。
「あー……今日、別の約束があって。ごめん」
両手を合わせて謝り、苦笑いを浮かべた私は嘘をついた。
別の約束なんてない。
お昼はいつも太陽くんと食べていたから。
太陽くんもまた、いつもそうだったから、変わらず私を誘いに来てくれたんだろうけど。
「え、そうなん」
予想だにしなかったのか拍子抜けした反応。
刹那、太陽くんの視線が私の手元に向いたのが分かってハッとし、マズイと思った私は反射的に手を後ろに隠した。
「弁当は?今日持ってきてへんの?」
隠した手は意味を成さず、太陽くんが不思議そうに私を見つめる。
高校生になってからまだそんなに日は経っていないけれど、毎日自分で作ってきていたお弁当は、言うまでもなく太陽くんに女子力をアピールしたいっていうこれまた不純な動機。
もう早起きする気力もないから今日からやめようと思って、作って来なかった。
……なーんて、そのままぶっちゃけるわけにもいかない。
「今日は、友達と食堂で食べるんだよね」
にこりと笑う私に太陽くんは「そっか」と数回頷いて、疑う素振りがかけらもないその態度に少し胸が痛んだ。
というか、私のことなんて気にしないでほしい。
先週まで気にしてほしかったくせに、今となってはその願いが叶ったところで虚しいだけだからそう思ってしまう。
「Aに初めてそんなん言われたから、ちょっとびっくりしてる、」
はは、と乾いた笑いにまた罪悪感が増した。
「あ、もう、行ってもいい?」
苦しい。
ただ苦しくて、いつ涙腺が限界を迎えるか不安で、教室と廊下の騒音に負けないギリギリの声量を絞り出しながら食堂を指差す。
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作者名:ハナコ | 作成日時:2016年5月2日 23時