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「福田がバテバテなんだよ〜」
「分かった分かった。体育館な？」
「そう！もうちょいで始まる」
……補欠って、こういうことか、とその仕組みを目の当たりにして私の無駄に冷静な部分が関心を示す。
「ごめん、俺ピンチヒッターしてくんね」
柊生くんは状況を飲み込むと私を見て申し訳なさそうに小さく笑い、私の返事は待たずに急いでこの場を後にした。
走り去る柊生くんたちを見えなくなるまで目で見送って、ぽっかり空いた隣に寂しさを覚える。
戻した視界の試合は後半戦に突入。
拓弥さんが居るＡ組は僅差で負けていた。
勝っているＢ組には祐基さんが居る。
黙ってひとり観戦すること数分、隣に人影ができたのが分かって、そっちに目をやった。
「……太陽くん、」
「３年生の試合か。あの先輩の応援？」
人影の張本人、太陽くんはにこりと爽やかな笑みを浮かべ、小首を傾げそう問うた。
私が間を置いて「そうだよ」と返すと太陽くんも「そっか」と短く相槌を打つ。
「俺らのクラスはもうどの競技も負けてん」
「そうなんだ。じゃあもう出番なし？」
「せやねん。Aのクラス、応援しよかなぁ」
お互いがグラウンドを眺め、口だけ動かして会話する。
私の意識は完全に太陽くんの存在とその会話にいってしまうと思っていたけれど、案外映る景色は鮮明で、勝手に目が拓弥さんを追っていた。
サッカー初心者中の初心者な私にだって、拓弥さんが上手いことは見て取れる。
体操着の袖で顔の汗を拭う姿に周りの女子が一瞬ときめいているのも見て取れる。
……でもときめく気持ちも、なんか分かる気がした。
「上手いなぁ、あの先輩。サッカー経験者なんかな？」
「そうかも。上手いよね」
「女子にも人気やんな？あのギャラリー、めっちゃ盛り上がってるもん」
「……うん」
太陽くんも私と同じことを感じていたようで、人に言われるとやっぱりそうなんだ、と思ってなぜかワンテンポ返事が遅れた。
刹那、笛が鳴って、拓弥さんがボールから目を離す。
こっちに向けられた目線に一瞬目が合ったのかと思ってドキリと心臓が跳ねた。
「Ｂ組の勝ちか。あの先輩、Ａ組やろ？惜しかったなぁ」
「そうだね。あとちょっとで巻き返……し、……」
試合結果の感想を言おうとする私の言葉が途切れたのは、拓弥さんが明らかにこっちに向かって歩いてくるのを認識したから。
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作者名：ハナコ
| 作成日時：2016年5月2日 23時
