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太陽くんは「なんてな」と冗談っぽく笑って八重歯を覗かせ、私が何かを言うより先に顔を背けた。
会計を始めた太陽くんから目を逸らしそそくさと購買を出る。
もう外に居た先輩たちの元へ駆け寄って「お待たせしました」と言うと「行こっか」と茉衣さんが微笑んで、歩き出した。
「大丈夫か」
談笑しながら並んで歩く茉衣さんと祐基さんの後ろで、私の隣の拓弥さんがボソッと言う。
思わず拓弥さんを見ると拓弥さんも私を見ていて、
「さっき、ちらっと見えた。なんか喋ってなかった?」
相変わらず真顔だったけれど、主語を言わずとも何の心配をしてくれているのかはすぐに分かった。
見えてたんだ。
若干、恥ずかしいような。
「平気です。大した会話じゃなかったので」
そう答えたのは本心。
ショックではあったものの拓弥さんに話して泣き出してしまうような会話ではなかったから。
自分から聞いておいて、彼女の話は聞くんじゃなかったと思ったけれど、でもそのあとの私のお弁当の話は嬉しいことで……正直プラマイゼロって感じだ。
拓弥さんは「ならいいけど」と言って、以降話題に出さなかった。
屋上に着いてベンチスペースに腰を下ろすや否や、祐基さんが持っていた紙袋を私に勢いよく差し出す。
「はい!修学旅行のお土産!俺と茉衣から〜」
「えっ、いいんですか?ありがとうございます、」
「私ら向こうでそれ初めて食べたんだけど、すごい美味しかったから買ってきたの」
驚きながら受け取る私に祐基さんと茉衣さんは得意げな顔をした。
紙袋の中を覗くと中には北海道土産の定番であるバターサンドが入っていて、これまた食べたことがないながらも好きであろう味に笑みが零れる。
「草川は?まさか忘れてたとか言わないよね」
「忘れてねーわ。俺はもうあげたの」
「そうなの?早くない?」
「いち早く渡さなきゃヤバいやつだった」
「何それ怖い」
茉衣さんと拓弥さんのそんなやりとりにも笑いそうになった。
……先輩たちに、何かお礼したいな。
私の修学旅行はさすがに先すぎるから、近々、何か。
「てかさぁ、ちょっと俺の話聞いてくれる?」
各々がお昼ご飯を食べ始めてすぐ、祐基さんが神妙な面持ちでそう口を開く。
きょとんとしたのはどうやら私だけみたいで、茉衣さんは黙ってお弁当を食べていて、拓弥さんは野菜ジュースのストローを咥えたままスマホを弄っていた。
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作者名:ハナコ | 作成日時:2016年5月2日 23時