ゆめうつつ【１】 (ページ4)

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ダークブラウンの頭に重たい前髪。
その下に大きくて丸い目。

次は何を言われるのかと身構える私に、

「腹痛いなら保健室行け。じゃあな」

冷たく言い放たれた捨て台詞。

怪しさ全開のその人に顔を顰め、急いでローファーに履き替えた私は靴箱を力強く閉めた。

そしてその背中に駆け寄り、腕を掴む。

「な、なんで私の名前知ってるんですか」

もう声に出されずとも、目から「面倒臭い」と伝わってくる。

「この間、入学式で挨拶してただろ」

「……あ。新入生代表の」

「それで自分で名乗ってたじゃん」

入学式の新入生代表挨拶。
それだって言うまでもなく自分の恋のための努力のひとつだった。

そういえば、確かにあの式に出ていた人なら私の名前を知っていてもおかしくない。

なるほどと納得して黙る私の手からすっと自分の腕を抜くその人。

「保健室行けって。先生居なかったら病院行け」

「いやあの、私、別にお腹痛くないです」

「……じゃあ何？泣いてた理由。失恋でもしたわけ？」

ひゅっと喉が詰まった。

この人はなんとも思ってないんだろうけど、何の気なしにそのワードを出したんだろうけど……私にとってその問いに頷くことは傷口に塩を塗るようなもの。

「そんな、感じです」

かと言って嘘をつく理由もないから小さく答える。

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