ゆめうつつ【１】 (ページ22)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:155,507 hit

003 ページ22

.

「２年に、″柊生″っていうのがいるんだけど。俺らが居ない間はそいつと昼過ごしといて」

「え？」

拓弥さんの口から出たまさかの提案に、というか決定事項っぽいことに驚いて思わず振り返った。

今度は拓弥さんが腕を組んでいて、目を丸くして固まる私に「もう柊生には言ってあるから」と付け足す。

２年の″柊生″って、どちら様？
ていうか自分の不在を気にかけてくれるとは。

「……拓弥さんって、過保護ですね」

先輩たちが居ない間の私のことをそこまで心配しなくても、と思ったら笑いそうにもなったけど、その優しさには胸がきゅっとなる。

曖昧に口元が緩んだ。

「過保護っていうか、お前が危なっかしいだけだろ」

「え、そうですか？しっかりしてるってよく言われるんですけど……」

「しっかりしてる？優等生ぶるのも程々にしとけ」

「ぶってるんじゃなくて本当に優等生なんですー」

「少なくとも俺の目にはそうは映ってないな」

「じゃあ拓弥さんの目にはどう映ってるんですか？」

質問を投げてからそそくさと紅茶を買って、ガシャンと落ちてきたそれを取る。

「…………手のかかる子犬、的な？」

「ヒドイ」

紅茶を握って振り向けば、拓弥さんは悪戯に笑った。

「寂しかったら連絡してきていーよ。せっかくライン交換したことだし」

「鬼のように電話とか掛けましょうか？朝４時ぐらいに」

「めっちゃ嫌がらせ……つか、まずお前が起きてないだろその時間」

茉衣さんと祐基さんの元に戻りながらそんなやりとりをして、「爆睡です」と私が笑うと拓弥さんも笑った。

.