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「てかAちゃん、ライン交換しようよ!」
各々食べている途中、茉衣さんが思い出したように言う。
たまごサンドを口に含んだままこくこくと頷くと、茉衣さんはお弁当箱の横に置いていたスマホをさっと弄って私の方に差し出した。
画面にはラインのQRコードが表示されていて、慌ててスマホを取り出した私はそれを読み取る。
「俺のやつ送っといて」
「じゃあ俺のも〜」
拓弥さんと祐基さんが便乗して、茉衣さんは「ほーい」と返事してその場で私にふたりの連絡先を送ってくれた。
こんなに操作が素早い人初めて見たってぐらいスムーズ……。
感心しながらカフェオレの紙パックを持った私は、それがやけに軽いことに気付き、一応ストローから吸ってみるとズッと特有の音。
「私、ちょっと飲み物買ってきます」
「あれ。カフェオレ飲み干しちゃったの?」
「そうなんですよ、なんか今日喉乾いてて」
茉衣さんの問いに笑って答え、財布を掴んで立ち上がろうとした瞬間、同じタイミングで隣の影が動く。
「俺もなんか飲む」
「あ、ついでに買ってきましょうか」
「いい。一緒に行く」
………?
頼めばいいのに、と拓弥さんの行動にハテナを浮かべつつ、先に歩き出した彼の背中を追った。
座っていたベンチから少し距離がある位置に置かれた中庭の自販機は、全部で5台並んでいて、たぶん校内で最も種類が多い。
だからここで買うときはいつも迷う。
「長くね、そんな悩む?」
今日もやっぱり迷ってしまって腕組みまでして考えていると、さっさと自分のを買い終えた拓弥さんが呆れたような台詞を呟く。
「先に戻っててもいいですよ」
「いや、まあ待つけど」
今日も今日とて可愛く振る舞えない私に拓弥さんはなぜかふっと笑って、自分のジュースを早速喉に入れた。
私は再び自販機に目を戻してシンキングタイム。
「……そういやさぁ、修学旅行あるじゃん」
二択まで絞ったところで後ろから拓弥さんのそんな声がして、結局無難に紅茶を選んだ私は「ですね」と相槌を打ちながら財布を開ける。
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作者名:ハナコ | 作成日時:2016年5月2日 23時