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そういや、お店に行く前、太陽くんと彼女を見たのに、茉衣さんが迎えに来てくれたから今までひとときも思い出さなかったな……。
そんなことより先輩たちと居るのが楽しくて、悲しいことなんか頭の片隅に追いやっていた。
「……拓弥さん、今日、ありがとうございました」
拓弥さんが金曜日声を掛けてくれたお陰で、月曜日タイミングよく現れてくれたお陰で、私はこんなにも救われている。
私の突然のお礼に拓弥さんはきょとんとした。
「俺、今日なんもしてないけど。いちごのこと?」
見当違いな言葉にふっとつい笑ってしまって、そんな私を見て拓弥さんは余計意味が分からなさそうに眉を寄せる。
「拓弥さんがいたから、茉衣さんとも祐基さんとも知り合えたなって思って」
率直な思いを述べると自然と口角が上がった。
これが前に進めているのかは分からないけれど、拓弥さんと出逢ってなければ、私はまだひとりで泣き続けていたかもしれないから。
「あの、お昼、明日からも一緒に食べていいですか?」
「……言われなくてもそのつもりだけど」
図々しい願いだとは分かっていてもそう言わずにはいられなくて、そんな私に思ったより淡々と答えた拓弥さんに少し驚く。
黙っていると「まぁ」と拓弥さんが口を開いて、
「友達と居た方が気が紛れるのは事実だし。頑張って立ち直れよ、失恋号泣娘」
私の頭にぽんと手を置いてそう続け、その大きな手の平でくしゃりと優しく髪を撫でた。
「……なんですかそのあだ名」
照れくささやら恥ずかしさやらいろんな感情が渦巻く私は、離れる手を横目で追いながら可愛げのない態度を取る。
ふは、と笑う拓弥さんの横顔に、なぜかとても安心感を覚えた。
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作者名:ハナコ | 作成日時:2016年5月2日 23時