検索窓
今日:8 hit、昨日:11 hit、合計:155,523 hit

004 ページ16

.





「キャラメルソース、たくさん付けた方が美味しいですよ」



あんまり付いてないところを取ったように見えたから、一応そう伝えてみる。

もしかしたら遠慮だったのかもしれないけど、せっかくのアーモンドキャラメルなのになんだか勿体ないような気がして。



「じゃ、もう1口食べてい?」



私が「どうぞ」とお皿を差し出すと、今度は助言通りキャラメルソースを付けてから食べる拓弥さん。



「これめっちゃ美味い」



拳を口元に当てて感想を零す顔が、小さい子どもが新しい何かを見つけたときみたいに輝いていてちょっと微笑ましくなる。

こんな顔もするんだ。なんか意外。



「口の中、なんもない?」

「え?はい」



私に確認した拓弥さんは自分のパンケーキを切って、器用にいちごまでフォークに刺し、こちらへ差し出した。



「……こんなにですか?」

「うん。だって俺、2口もらったし」



多めに感じる量に質問してみるも、「何か?」って顔で答えられてそれ以上何も言えなくなる。

フォークで出されているものをフォークで受け取るわけにもいかないし、言葉がないにしろ完全に「あーん」されているこの状況に緊張が走った。



「ん。」



黙る私に向かって「ほら」とでも言うようにさらにフォークが近付けられ、どうすることもできないから私はそれを口に入れた。

いちごチョコレートなんて美味しくないはずがないんだけど、真剣に味わえない。



「美味いでしょ」



もちろん美味しいのは美味しいからとりあえず頷いて、どこか嬉しそうに笑う拓弥さんを見つめた。



「いいなぁ。俺もいちご食べたーい」

「!」



私の斜め前に座る祐基さんの台詞にハッとした。

祐基さんは眉を八の字に下げて口を尖らせていて、隣を見れば茉衣さんも拓弥さんと私を交互に見ながらにやにやしている。


……「あーん」の現場を目撃されたっぽい。
ふたりとも隣に座ってるんだから当然と言えば当然。


急に恥ずかしくなって自分のパンケーキをそそくさと食べ始める私の隣で、茉衣さんは小さく笑っていた。

そのあと自分のいちごが減ると言いながら渋々祐基さんにも分けてあげた拓弥さんは、さっきの状況をふたりに見られたことは分かっていたはずだけど、特に気にしてなさそうだった。

やっぱりそういうのは気にならないタイプなんだ、と思った。




.

005→←003



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (93 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
414人がお気に入り
設定タグ:超特急 , タクヤ   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ハナコ | 作成日時:2016年5月2日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。