003 ページ15
.
「あ、いえ、ちょっと眠かっただけです」
「そう？ならよかった！さ、パンケーキ行こう」
柔らかい笑顔でそう言った茉衣さんに「はい」と返事して立ち上がる。
茉衣さんと玄関に行くと拓弥さんと祐基さんが居た。
昨日初めて会ったのに、今日のお昼もご一緒させてもらったからか、人見知りな私の割にはあんまり緊張していない。
例のパンケーキ屋さんは歩いてすぐだった。
予約の話が出ていただけあって、見るからに大盛況。
単純にオープンしたばかりだから人気なのかなとも思ったけれど、雰囲気と漂う香りから味にも期待が膨らむ。
「これ食べたい、こっちも美味しそう。でもこれも捨て難いし〜」
席に通されてからさくさく決まった私たちはそっちのけで、茉衣さんは何を頼むか結構な時間迷っていた。
「どれ頼んだ？」
「アーモンドキャラメルのやつです」
「ふうん。俺、いちごチョコレート」
注文をして待っている間、拓弥さんがそんな情報をくれる。
「ちょっと頂戴。俺のもあげるから」
なんて返そうかなと考えていると、顔色ひとつ変えずに要望を告げられた。
それ以外他意のない、率直な希望だろうけど、女の子に軽々しくそういうこと言うのは如何なものかと思う。
そういえば拓弥さんには好きな人がいる。
……その人に対してもこんな態度なのかな？
いや、好きな人に対してだけならいいかもしれないけど、他の子に対しても同じならちょっと考えものだな……。
それともこういう場での食べ物のシェアっていうのは、普通は男女とか気にしないのかな。
脳内で想像を繰り広げているうちに店員さんがパンケーキを持ってきた。
「お待たせしました」
食べ始めるみんなに続いて私もフォークを握る。
見た目からも期待感満載なそれは、口に入れるとアーモンドとキャラメルの香りが鼻を抜け、生地の柔らかさとホイップの甘さが口内に広がった。
さすが人気店。
予想通りめちゃくちゃ美味しい。
「美味い？」
感心しながら黙々と味わっていると、軽く笑った拓弥さんが私を見ていて、緩んでた顔を引き締める。
私は頬と口をもぐもぐさせながら頷いた。
お冷を飲んでフォークを持ち直した拓弥さんは「もーらい」と呟いて、私のパンケーキの端を切り、そのかけらを自分の口へ運んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 414人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハナコ
| 作成日時：2016年5月2日 23時
