解けゆく心〈フィッシャーズ〉

頑張ったんだよ ページ1

モトキ
「A……」

シルク
「凄いよな……全力で走ってきたんだと……」

モトキ
「足……怪我してたのに…」

シルク
「暫くは安静にしてねぇとな……」









膝や肘にたくさんの擦り傷

捻ってしまっていた足首が

さらに青黒くなってた


さっき、そんなネクタイなんて……

って思ったけど……

Aの気持ちを理解してなかった

それはどんな不安な時でも

Aがずっと手放さなかったもの

大切なものなんだ……

寝ながらだけども……

手当しないと……









『んぅ？』

モトキ
「あ、起きちゃった？擦り傷が多いから消毒しよ？」

『…痛い…！』

モトキ
「すぐだよ……我慢ね……」

『…痛っ……』

モトキ
「よし、傷は大丈夫かな。シルク、テーピングある？」

シルク
「ほい」

モトキ
「ちょっと痛いかも……」

『だ、大丈夫……』

モトキ
「これでよし。よく我慢出来ました」









ぽんぽんと頭を撫でると

ふにゃっと笑うA









モトキ
「暫くは安静にね？」

『ごめんなさい……』

モトキ
「謝らないで……大丈夫…？」

『う、うん……』









そう言いながら

手は震えてた

そっと手を置く









モトキ
「怖かったよね……知らない人が来て……」

『うん……』

モトキ
「おいで」









そっと抱きしめた









『魁……怖かった……でも、頑張ったんだよ』

モトキ
「うん」

『頑張った…んだよ……魁………』

モトキ
「うん」

『魁……怖かったよ………』









俺の胸の中で泣き出したA

優しく背中を摩る


ぎゅ…

Aの腕に力が入る

嬉しいよ頼ってくれるなんて……









モトキ
「俺が寝てるとこだけど、寝る？」

『うん……魁の傍がいい……』









布団に入ってからでも

Aの手を離さない

すぴー…と規則正しい寝息が聞こえてきた

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