先生のお気に入り

49、先生のお気に入り ページ49

　
　
　
K「うはぁっ！」



俺に優しく触れた物がある。



F「可愛い、足ピーンてなっちゃって。」



藤ヶ谷のお遊びはいつも不意打ちで始まって、しかもしつこい。



F「この筆もさ、字を書く事には使えなくなっても、こうしてまだ先生の役に立ってるんだから、幸せだよねえ。」



繊細な筆先は、うなじから背骨に沿って、尾骶骨まで真っ直ぐに降りていった。



K「ふわああああ〜ン」



F「先生は本当にこの筆が一番のお気に入りだね。

反応がダントツにイイ。

わかりやすい人だな。」



筆は生きた動物のように、俺の尾骶骨、更にその下で震えた。



F「もっと探索してみようかな、先生のカラダ。」



藤ヶ谷に自在に転がされ開かされ、隅々まで筆を這わされ、俺は声を上げてのたうち回った。



細い筆先は、様々な所へと分け入る。



F「フフフ、すごーい！

でも……この筆と俺と、どっちがお気に入り？」



K「ンン〜、藤ヶ谷に、決まっ……てんだろー」



藤ヶ谷は毎回同じ事を俺に訊く。



それを確認しないと、気が済まないのだ。



K「筆が俺を抱けるかっ」



藤ヶ谷じゃなきゃ。



F「ですよねー」



そう言うと、藤ヶ谷は筆を放り出して俺を引き寄せる。



F「筆で先生を弄るのも超絶楽しいけど。

直に触ってもイイ？」



K「イイよ。」



F「北山先生、大好き！

今は本当に幸せなんだ。

こうして先生に自分の手で触れても、先生が好きって言っても叱られない。」



K「俺も藤ヶ谷が好きだよ。」



俺だって「好き」って口に出すのが許されるまでに、何度も季節が廻った。



時間の流れに俺達は試されてきた。



でも負けなかった。



許された瞬間、ドボンとお互いの沼に落ちた。



あとは、ズブズブとハマって、教師という職業など忘れて狂うだけ。



だから俺も毎回だって言う。



K「大好きだよ。

お気に入りの筆より何より、藤ヶ谷が俺の……一番のお気に入り！」







end

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