先生のお気に入り

5、Z組のアイツ ページ5

　
　
　
二人の営みを見聞きする事は一切無いが、三人で一つ屋根の下暮らす事が……夜は特に、吐き気をもよおすくらい耐えられないのだと、やっと俺に語ってくれた。



それは生理的なもので、理屈では解決出来ない感情だった。



俺は藤ヶ谷に、保健室での朝寝を許した。



頭痛も腹痛も貧血も、嘘じゃない。



嘘ついてサボりたいのか？ なんて、言わない。



登校拒否する子は、登校時間になると本当にあちこち痛くなると言うし。



それでも必死で登校してくる藤ヶ谷を、俺はいじらしいと思う。



かわいそうに、藤ヶ谷は女子じゃないから……



延々と「生理二日目」的な体調は続き、去ってはくれない。



だいぶ大人の精神構造を既に持つ女子と違い、男子はまだ発展途上。



多分、大人になるにしたがって、この体調不良は軽減していき、嘘みたいに消えていくのだろう。



そういう年頃の男子の成長過程を見守ってやるのも、男子校の保健室の先生の大きな役目だ。



その使命感のせいかもしれないが……



俺は、藤ヶ谷が保健室登校を続ける理由が、単純に家庭の事情だけなのだと勘違いしていた。
　
　
　
　








俺は再度「大丈夫か？」と問うた。



俺の問いかけに、藤ヶ谷は答えなかった。



その代わり、不快そうに眉を寄せた。



その表情もトラップだよ。



全て計算なら、寝ている時は子猫のような顔をしといて、本性は心底ズルいメス猫だと思う。



それでも俺はまだ、無垢な寝顔を疑い切る事が出来ないでいる。



前髪を搔き上げて額に触れた途端、藤ヶ谷は薄く目を開けた。



うわっ、起きてんのかよ。



F「北山先生……何……してんの……？」



K「ね、熱があったらイケナイなって思ったから。」



絶妙なタイミングで目覚めやがって。



俺がイケナイ感じになっちゃったじゃねーかよ。



K「隣のベッドにブレザーとカバン置くな。」



慌てて視線を逸らさせた。

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