先生のお気に入り

32、ボタン ページ32

　
　
　
終鈴が鳴ると藤ヶ谷が帰って来た。



2限目と3限目の間の20分休みは、意外と保健室に人が来る。



家庭科で包丁で指を切った生徒と、階段でふざけて躓いて手首を捻挫をした生徒、出会い頭にぶつかって額にタンコブを作った生徒が、友人に付き添われて次々とやって来て、手当て用の長椅子がいっぱいいっぱいだ。



馬鹿だな、小学生みたいな理由で怪我をして。



全開にしていた白衣の前ボタンを、全部留めた。



三人とも病院送りになるほどではなく、俺は優先順位を付けて処置を済ませていく。



捻挫とタンコブの子には冷却用のアイスバッグを渡しておき、指の切り傷は洗浄と止血。



K「包丁やガラスで切ると結構血が出るからな。

びっくりしただろ？」



男子は血を見慣れてないから、ちょっとした出血に意外とビビる。



K「もう止まったし絆創膏で大丈夫だ。

スペアを多めに渡しとくから、血が滲んでくるようだったら付け替えろ。」



続いて捻挫とタンコブに、消炎鎮痛の冷湿布を貼ってやった。



K「アイスバッグは湿布の上からも当てておけ。

それから、授業を受けても良いが、手ははなるべく机の上に置いておく。

位置が低いと、手首に体液が降りやすいから腫れが引きにくくなる。」



問題は額のタンコブだ。



K「吐き気や視界の異常が無ければ、取り敢えずは一安心だ。

でも、手足の痺れとか、もし少しでも調子がおかしくなってきたら、医者に行かないとダメだぞ。

まあ元気そうだから、しばらくここで様子を見て授業に戻るなり早退するなり、好きな方選べ。」



処置が早く深刻でなければ、タンコブの腫れは引いてくる。



一連の処置が終わって生徒達が全員出ていくと、再び保健室は静かになった。



こんなに怪我人が重なる20分休みは珍しい。



汗が滲むくらい忙しなかった。



K「あっちぃ〜」



再び白衣のボタンを全て外す。

33、体育着→←31、ベッド

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