先生のお気に入り

31、ベッド ページ31

　
　
　
F「いつもの通りだよ。」



だろうな。



頭痛い、怠い、フラフラする……不定愁訴みたいなものだ。



若い子の場合はホルモンバランスの悪さではなく、心因性が多いから馬鹿に出来ない。



藤ヶ谷をここで預かるのも、やっぱり捨て置けないと思うから。



K「ベッド行くか？」



そう言った俺に藤ヶ谷はクスリと笑う。



F「言い方……

同棲してるカップルみたい。」



K「べべ別にわざとじゃ……」



F「じゃあベッド行ってるね。

後で来てよ。」



藤ヶ谷は笑いながらカーテンの向こうに消えて行った。



「後からベッドに行く」のがちょっと照れ臭いじゃん。



クッソ〜また朝から楽しそうに俺をからかいやがって。



しばらく休んでいたかと思うと、フラリと授業を受けに行った。



2限目の体育には出るようだ。



しかし、またここに帰ってくるつもりらしい。



体育着で身軽に出て行ったから、カバンも置きっぱなしだし、制服のシャツもズボンもベッドに投げ出してある。



K「しょーがねえなあ。

自分のベッドだと思ってる。」



ハンガーにかけてやるか。



シャツを手に取ると、ふわっと藤ヶ谷の香りが立った。



もう嗅ぎ慣れてるはずなのに、嗅いだ者を惑わせる禁断の妖しいインセンスみたいに思えて、なるべく吸い込まないように気を付ける。



藤ヶ谷が知らない間に一人で勝手に嗅ぐ事に、要らぬ罪悪感を感じる。



いや勿論、隠れてわざわざスーハーするつもりも毛頭無いけど。



それは明らかに、教師の道を外れる行為だろ。



制服をハンガーに掛けて、転がってるカバンもベッドサイドに置き直してやった。



窓の外の校庭を見ても、今日は誰もいない。



6月以降は熱中症対策で、体育はプールかエアコンの入っている体育館での室内球技と決まっている。

32、ボタン→←30、白衣

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す