先生！早く原稿上げて下さい！(土下座する勢い)

4、渉さん ページ4

　
　
　
先生が他誌にも連載を持つようになると、やっぱり他社に対して睨みの効く人間に担当を代えようかと、編集長が提案した事がある。



担当の格上げをオファーしてみたが、先生は即却下、全く首を縦に振らなかった。



「彼以外にあり得なーい！」



そう言って、俺を手放さなかった。
　
　
　
今年、先生が若くして建てたのがこの家。



書斎に始めて入った瞬間、ある種の悪意を感じた。



俺がもしオンナの編集者で、先生と二人でこもるような事にでもなろうものなら、ここは絶対「ヤリ部屋」だって囁かれるに違いない。



俺と先生は、腐れ縁。



そしてこの書斎は……俺のために作られた部屋。



ここで夜を徹してまで待機を許される(強制される？)編集者は、俺だけなんだから。



基本的に俺以外は応接間に通される。



ウチが最初に先生を起用してメインの連載を持ってるから、俺が「特別待遇」でも全く不自然じゃないと、みんな思ってる。



だから余計に、ハラスメントは闇から闇へと葬られる。


　
　
　
　




原稿の〆切日前日から先生宅を訪ねる。



呉「ちわ〜っス、月刊グローイングの呉居でーす。」



玄関でインターホンを鳴らすと、渉さんが応対してくれる。



渉『今出ます。』



ガチャリとロックの外れる音が三回鳴って、重そうなドアが開いた。



セキュリティーレベル高〜



ドアの中へ入ると、まだ新築の匂いがする。



渉「原稿ですね。

お疲れ様です。

どうぞ。」



この家は実質渉さんが仕切っている。



渉さんは最古参のアシスタントでありながら、先生の秘書、キレッキレの執事みたいな存在だ。



この業界では真ヶ谷先生よりも先輩で、挿絵のアルバイト等で食い繋ぎつつ、元々プロのギャグ漫画家を目指していた。



しかしついに日の目を見る事は無かった。

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