モヤモヤウルフと真っ赤な罠 on Xmas Eve 2015

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ナイフを丁寧に、白いモコモコへ沈める。


現れた断面はチョコレート色のスポンジと、
そこに埋もれるチェリー。


キルシュをたっぷり吸ってるチェリーは、
ナイフが入ると赤いジュースを滴らせて、
真っ白なクリームとケーキプレートを赤く染めた。






チキンと同様、
ミツは「おいひいおいひい」と言いながら、
口一杯に入れてムシャムシャと平らげていく。


もうちょっと味わうとかしたら？


もしくは、定番の……アレ。


おねだりは無いの？


F「たっ、食べさせて……あげよっか？」


ううっ、自分から言ってしまった。


歯ぎしりするほど悔しい。


K「美味しいから、もう食べ終わっちゃった。」


心配するな、まだ俺の分がある。






F「ねえ知ってる？
このケーキの名前。」


K「ブラックフォレスト、だね？」


そう。


ブラックフォレストはドイツの内陸、
フランスやスイスの国境へと広がる
シュヴァルツヴァルツ「黒い森」の事。


F「ここはね、
鬱蒼と暗くて、昔は妖精や悪魔や魔女が
住み着いてるって言われてた。」


ミツの口と自分の口へ、
フォークで交互にケーキを運びながら語る。


F「現在は野生のものは絶滅しちゃったみたいだけど、
狼さんだって住んでたんだ。」


K「ンフフ♪ 
チョコ色の狼さんと甘酸っぱい赤ずきんちゃん、
真っ白なクリームにまみれて、
お皿の上で何してるのかな〜」


お前の唇もクリームでまみれで。


その唇でミツは何言い出すの……。


K「狼さんが、黒い森を食べさせてくれるなんて……
特別な夜だ。」


今夜狼を捕らえるためのトラップを、
お前は一体いくつ用意してる？


上を向いて口をアーンと開けるミツは
まるで落とし穴。






ケーキはほぼ食べ尽くし、プレートには
デコレーションから転げ落ちたチェリーが三つだけ、
残されていた。

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