愛され屋

37、ギャップ(side-F) ページ43

　
　
　
翌朝、暑くて目覚めた。



カーテンも閉めていなくて、朝の空が窓いっぱいに広がっている。



早朝からオフィスに北山さんがいる強烈な違和感。



あんなに寒がっていたのに、ブランケットは床に投げ捨てられていた。



F「暑いな。」



エアコンを止めて窓を開け、外気を入れる。



風がデスクの上のバラを煽って、花びらがこぼれた。



一晩中フルパワーの暖房をまともに受け続け、バラは一気にヤられてしまったようだ。



F「あ・・・・」



目の前にある物に、俺はハッと息を飲む。



デスク上にこぼれた花びらは更に舞って、裸の北山さんに落ちて降りかかっていた。



自然のイタズラのはずなのに、視覚効果を計算して魅せるグラビアみたいだった。



F「北山さんには、やっぱり赤が似合うよ。」



気付かないまま、北山さんはまだ爆睡中。



汗をかいているせいで、花びらは北山さんの肌に貼り付いた。



良かった。



汗をかいてるって事は、熱は下がる傾向にある。



F「何て可愛いんだろう。

あんなにしっかりしてそうで、どっちかと言えばアニキキャラなのにさ。」



これは典型的なギャップだ。



可愛いのに花びらを纏った裸体は淫らだ。



ギャップの上にまたギャップ。



F「やっぱりギャップって、タマランね。」



北山さんのオデコからは熱冷ましのゲルシートは剥がれていて、代わりにそこにも赤が一枚。



それを指でそっと摘んで取り、俺は北山さんのオデコに思わず唇を寄せた。



F「熱、計ろうね。」



唇で……



F「フフフ、微熱かな。」



そして耳元に囁く。



F「バラも天使に堕ちちゃったみたい。」



さっきから何言ってんだ俺。



F「ハズ……」



北山さんはまだ寝てるから、俺が北山さんに何を言って何をしたかは気付かれてないが、もし寝たフリされてるなら、恥ずかしくて死にたい。



薄目開けてたりしないよな？



イケナイと思いながら……思えば思うほど……また夕べのイヤらしい気分が蘇ってきて熱く疼き、隠しようも無い。

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