愛され屋

35、妄想(side-F) ページ41

　
　
　
F「一旦起こすよ？

よいしょ。」



北山さんを向かい合わせのまま膝の上に抱え上げ、背もたれのある位置に移動した。



素早く北山さんの背中をブランケットで包む。



F「体重、俺の肩に預けて良いからね。

体勢が辛かったら言うんだよ？」



K「ん……」



F「ホラ、これなら腰に届く。」



でも、すんげーえっちぃ体位になっちゃってる。



しかも二人とも真っ裸で、俺は両手を北山さんの腰に回してスリスリし続けてる。



普通ならコレでえっちくないわけがない。



いやいや「体位」って……言い方。



F「少しは楽になった？」



K「キモチぃ……藤ヶ谷の手……好き……」
　
　
　
　







ん？



何だろう、この愛しさは？



泣きたくなる。



これほど人の身体を想って、触れて慈しんだ事はあった？



優しい俺の手を、北山さんも望んでいる。



それならますます期待は裏切っちゃいけないな。
　
　
　
　








『優しくさすってるだけ？
紳士ぶってんじゃねえよ。
腰をガッと掴んで、ズコーンと奪っちゃえよ。
強引に攻めてみろって。』



悪魔の囁きが、いつもの北山さんの声で脳内再生される。



何だよ、唐突に？！



やめてくれ。



体調と裏腹な事を言うな。



イヤらしい妄想が、モクモクと膨れ上がり始めた。



北山さんは俺に体重を預け、両腕をダラリと落としているが、もし仮に……あくまでも仮に、北山さんが元気だったら、どんな北山さんを見せてくれる？



この肩に爪を食い込ませるくらい、必死でしがみ付いてくる？



この膝の上で滅茶苦茶に暴れるくらい、俺に狂う？



ドアの外まで漏れ聞こえそうなくらい、叫ぶ？



今はグッタリと力を失っている背中を、勢い良く仰け反らすような瞬間は？



俺はそれを望んでいる？



横目に入ってくるバラの赤と、フルパワーの暖房のせいで部屋にこもるバラの香りが、俺をけしかける。



北山さんの荒い呼吸が、耳にかかる。



合わせた胸の鼓動が速い。



どうしたって、掻き立てられる。



モクモクモクモク……



こんな淫らな妄想を抱いてしまうのは、北山さんを愛してしまったからなのか？



どうなんだ、俺……

36、愛する事(side-F)→←34、トラップだらけ(side-F)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す