愛され屋

33、オフィスで禁断の……(side-F) ページ39

　
　
　
F「わかったよ、今夜はずっとそばにいる。」



俺も濡れそぼった服を脱ぎ、身体を拭いた。



北山さんを拭いたタオルを使い回したけど、不思議と嫌悪感は無かった。



F「おかしいな、恋人同士みたい。

タオルを共有出来るくらいの。」



水分を拭き取ったら、すぐに身体中に汗が滲み出した。



F「暑い！」



俺は汗だくなのに、北山さんは身体を縮こめ、額に汗の一粒すら浮かべていない。



F「ふー、あっつぅ〜」



俺の言葉はお構い無しに、「寒い寒い」と呟いている。



K「寒いぃ」



それにしても暑い。



でも暖房は切れない。



設定温度も風量もマックスにして、カウチの方に向けた。



K「さっむーーーーーっ」



北山さんの額に触れてみた。



F「アツっ」



解熱剤を飲ませたけど、ちゃんと効くのかな？



F「そうだ、救急箱に体温計あったはず。」



あと、熱冷まし用のオデコに貼るヤツ。



F「39.8度！」



寒がるのも大袈裟じゃないらしい。



まだガタガタ震えてるから、もっと上がるかもしれない。



F「コレ、貼ってあげるね。」



水色のゲルシートをオデコに貼ってあげたら、童顔の北山さんが余計に童顔になった。



保健室の小学生みたいだ。



ますます、外から覗かれたらイケナイ禁断の大人×男児劇場だよ！



F「か、可愛い……」



ゴクリと喉が鳴ってしまった。



K「んん〜……寒いってばぁ〜……」



この期に及んで、どこからそんな甘い声が出る？



何が狙いだ？



また俺の手首を掴んだりして。



F「もしかして、温めて……欲しいの……？」



漫画やドラマでは、思いがけず人肌で温めたり人工呼吸に至るシーンは出てくる。



単に演出だろ。



やっちゃイケナイ場所で行う禁断の行為だと思うから、ドキドキするんだよ。



肌や唇を合わせるのに事前の同意は必要だが、緊急回避だって言い訳しながら、順番を無視して行為に及んでしまう。



素人考えで処置したところで、効果があるのか疑わしい。



大体その後恋が生まれたりするのは、ベタなパターン。



そっちの方に都合良く効果が出るんだ、フィクションでは。

34、トラップだらけ(side-F)→←32、引き止める力(side-F)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す