愛され屋

17、意図的偶然(side-K) ページ23

　
　
　
F「私は、偶然からの運命は信じません。

それが叶う人も稀にいらっしゃいますが、『運命の偶然』を待ってるだけではヒットの確率が極めて低い。

チャンスは逃げてきます。

偶然に見せかけて、印象的なハプニングの状況を作り出すべきです。

例えば、街中でバッタリ行き会うのはハプニングの典型ですよね。

これを意図的に起こしたら、ストーキング行為になりかねませんが、あくまでも偶然だと感じさせたらセーフです。

会いたくてアナタの職場の近くでウロウロしてました、なんて、キュンワードどころか、絶対に言ったらNG、人によっては一発アウトです。

バッタリ出会ったら、そこにいた理由付けが必要です。

近くに良く訪ねる取引先があるとか、お気に入りの店があるとか、それらしい理由なら何でも良いんです。

勿論、周到にリアルなお店は設定しとかないとダメですよ。

嘘はバレます。

意図的な再会を『偶然』だと信じさせ、それを『運命』と勘違いさせるんですよ。」



エートル・エメの広告が表示されたのは偶然だ。



藤ヶ谷は死んでも認めないな。



俺の検索傾向がトラッキングされた結果だと言うだろう。



それでも、マッチングアプリやスピリチュアルや占いも含め、星の数ほどある恋愛系の広告の中から、エートル・エメ表示されたのは偶然だし、クリックしたのは俺の意志で……



これは「偶然からの運命」？



そう思う時点で、俺は藤ヶ谷に上手い事シテヤラレてる。



藤ヶ谷が、如何にも正論語ってますって顔でゴチャゴチャこねくり回すから、ワケわかんなくなってきた。



やっぱり超絶メンドクセエ人だ。



顔から入って後々「この人じゃない感」が出てくる、俺の王道パターン。



でも藤ヶ谷と俺が「講師と受講生」の関係であるうちは、どーでもイイ。



「おっしゃる通り」「ははぁ、ごもっともですねー」と言いながら、藤ヶ谷を目一杯、この目と耳と鼻で堪能してやる。

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