「Hi ナマステ Hello、ようこそラトナラジュ東京へ！」(前編)

20、ロックオン　side-F ページ22

　
　
　
自分のテーブルに回ってくるヤツは漏れなく、サングラスとマスクを外さない俺に、怪訝そうな顔をする。



だいぶ痛い客に違いない。



痛いどころかちょっとキモいかも。



でもドイツもコイツも、俺にとっちゃゴミなんだよ！



いつ回ってくるんだ？ ナンバーワンは！



俺はピンクのマハラジャ様だぞ！



言わないけど。



フロアが急にざわつき始めた。



何だと思っていると……数人の男達の背中越しにチラチラと覗く、赤。



もしやしてもしやして、ナンバーワンが、ついに……



キターーーーーーーーーッ？ か？



下っ端に取り巻かれてて顔は良く見えない。



背丈は顔のイメージ通り、ちっこいに違いない。



絶対あの子に決まってる。



良く見えないのにオーラがヤベえ。



そこから上の空になった。



「楽しんでますかぁ？」



F「あぁ、まあね。」



フン、雑魚どもめが！



テーブルには相変わらず次々と人が回ってくるが、適当にあしらっておく。



俺の目は完全に、離れた位置にいる赤いジャケットにロックオンしている。



サングラスのせいで、誰も気付いてはいないだろうが。



しかし、さすがに彼は忙しそうだった。



まさかこのまま、遠くから眺めてるだけで終わるのか？



この俺が？



F「おおっ！」



一瞬しっかりと全身が見えて、チラリと顔がこちらに向けられた気がした。



しかしそれっきりだった。



俺のテーブルには音沙汰なし。



F「・・・・」



ついに俺は完全に黙りこくってしまった。



酒もそれほど強くはない。



やっぱり初回でも、押し通して指名ってヤツをすべきだったのか。



とにかく初めての事で、どーすりゃイイのかワケわかんない。



金はいくらでもあるっていうのに。

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