「Hi ナマステ Hello、ようこそラトナラジュ東京へ！」(前編)

18、本名　side-F ページ20

　
　
　
本名は「フジタニ ダイスケ」。



「フジガヤ」の方が耳に残るし、苗字に濁音多いから名前は濁音を取ろう、って社長の思い付きで「フジガヤ タイスケ」になった。



身分証が「フジガヤ」だったら、ここで帰るところだ。



恥ずかしくて耐えられない。



店員は免許証の顔写真と俺の顔を見比べてくる。



F「まだ？」



「あの〜お顔を……」



サングラスとマスクをしたままだった。



F「あ、ゴメンゴメン。」



ペロっと一瞬だけ外し、また付け直す。



我ながら速っ



現ナマ見せたんだ、こういう店でもっと顔をしっかり見せろとか、空気ブチ壊す事は言わないよな？



「・・・・」



何で固まってる？



F「ん？」



「少々お待ちを。

すいませ〜ん、ダイヒョー！」



小物感漂う店員がバックに向かって叫ぶと、ちょっと威圧感ある別な男が出て来る。



代表って偉い人？



代「恐れ入りますが、もう一度御身分の確認宜しいでしょうか。」



面倒臭えな。



なるべく顔見せたくないんだよ。



仕方無く再度サングラスとマスクを外す。



代「ほほう……」



どういう反応だ？



代「ようこそ、ラトナラジュ東京へ。

お客様は初回でいらっしゃる？」



F「そうですが、何か？」



やっぱりアイドルってバレてる？



人気はソコソコあるけど、国民的と言われてる先輩ほどじゃない。



一般男性が皆俺を知ってるかと言えば……そうでもないと思ってる。



代「ワタクシ、こちらの代表です。

失礼ですが、お客様は他店で勤務されている方ですか？」



F「ブファッ！」



コーヒー飲んでたら吹き出してたところだ。



F「いけませんか？」



代「いわゆる『視察』『引き抜き』的な目的ですと、弊店と致しましても……」



F「純粋な客なんだけど。」



代「そうですか。」



首を傾げてる。

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