２９〜JS〜 ページ29
あの日
Aヌナに電話したら
様子がおかしかったあの日から
僕は特にその理由を聞いたりはしなかった。
気にならなかったんじゃなくて
聞きたくなかった。って言った方が
合ってるかもしれない
その理由はだって
おそらく… 社長とのことで
トオルさんとのことで…
Aヌナの相談役になるほど
僕は自分の気持ちに余裕を持ち合わせていなかった
時間ができたら電話もしたし
1日に何回か
メールもした
恋人がいるって知っていても
Aヌナとどうしても
話していたかったんだ
繋がりが欲しかった
だってAが “好き” だから…
アルバムが発売されて
ツアーが始まる前に
全国をプロモーションでまわる
いつもはいけない地方にも行きたくて
ツアーの会場は
大きさを問わずに
ホールもあてた
1人でも僕の歌を
聞きたいって言ってくれるファンがいるなら
僕はそこに行って歌を聞かせたい
思うように活動できなくなって
出られないものも増えて
そんな中でも
いつでもずっと待っててくれた人たちの
声を聞きたいし 顔も見たい
でも
そんな僕の気持ちは
思い上がりだったりもするのだろうか？
ファンは
喜んでくれるかな…
ふと漏らした
僕のカッコ悪いつぶやき
Aヌナの言葉に
いつだって
ステージから見える
みんなの顔を思い出したんだ
そうだ。
僕が“しあわせな”ステージ
僕が。
誰よりもわくわくすること
思い出したら
早く
早くみんなに会いたくなっちゃって
走り出したい気分になって
だからそのまま走った(笑)
ふと廊下の先で気が付けば
走ってるのは僕だけ
急いで部屋に戻って
Aヌナを連れ出した
僕の ワクワク
伝わってる？
差し出した手を
ヌナからは掴んでくれない
ちょっと強引だけど 連れて行きたいんだ
だから
ヌナの手を取ると
走り出す
この手からー
僕の “気持ち”が 流れ出ちゃってる気がして
それはなんだか すごく恥ずかしくて
振り向けなかったんだよ
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作者名：maco | 作成日時：2020年10月6日 15時
