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バギンッと、目の前スレスレでなにかが横切った。
え、何。なんなの本当、と狼狽えるオレは、はたと気づく。オレは見事なまでにマッシュの腕の中に閉じ込められているし、そのおかげで守られている。
しかも現在進行形で、マッシュは目の前でその何かを受け止めている。
「…何?この変なの」
「あ、そういや先生、「魔物から取らなくてはいけない危険なものもあります。大変危ないので、無理をせず退却してもいいですよ」って言ってたな….」
訝しげに目の前の化け物を見つめるマッシュに、腕の中のオレが淡々と説明する。良かった、断片的に聞いてて。役立ったわ。
でもコイツなんの魔物だ?と手元のリストを見る。
「___げ。マッシュ、コイツやべえやつだ」
「? 見た感じでわかるけど。」
「ちげえそうじゃねえ!」
リストを見てわかった。コイツはエンギリザリガニという魔物である。どうりで鋭いハサミのような手と硬く光沢のある甲羅があると思った。
でも、このエンギリザリガニから取れるエンギリエリンギが、魔法薬に入れることでさらに効果が上がるらしい。
「とにかく、いったんぶん殴ってみる?」
そう言ってオレを腕の中から解放すると、パッと抑えていたザリガニの手を振り払う。「え、ちょっ」とオレが言い出す前に、拳を構えて飛んだ。
迎え打つように手のハサミを振り上げたザリガニに、オレはぞっと背筋に何かが走る。
ダメだ!戻れマッシュ!!
「マッシュ!ソイツの手に攻撃されると、縁が切れちまう!!」
「…え、」
それを聞いたマッシュは、すぐにハサミを避け、シュタッと軽やかに着地すると、「それ、本当なの?」とオレを見つめる。うん、とオレが頷くと、うーん…と唸りはじめた。
どうしようか、オレもなにか出来ることを探さないといけない。ランスさん呼ぶか?でもどこにいるかわかんねえし、かといってここから離れても追っかけられるのが最後。逃げ切ったとしても、授業終わっちまうし……ならいっそ迎え打つしか道がな「A!!」
「___へっ…?」
マッシュの声に、ふっと意識が戻る。
あ、やべえしまった、一瞬反応が遅れた。
ザリガニ野郎は単純攻撃では勝てないと判断し、地面を抉った。鋭く速い斬撃によって飛び散った砂の破壊力は、それはもう抉れるなんて優しいものじゃない。
あ、これ、死んだ。
「___あとで絶対、治してもらうから、ッ」
「はっ…?ッ、うわっ!?」
オレの身体がふわりと浮き、近くの草むらに飛び込んだ。
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人間 - 好きです!応援します!!!! (3月31日 23時) (レス) id: 89c49f19f9 (このIDを非表示/違反報告)
みんちょ - えええ、いや、めちゃくちゃええ。……なんやこの満足感は……マッシュ君もっとやっていいよ(?) (3月27日 23時) (レス) @page28 id: 0797d1e760 (このIDを非表示/違反報告)
むぎちゃ(プロフ) - えってぃだ……!! (3月4日 3時) (レス) @page23 id: cc2beb923e (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 男主、受け攻めとかありますか? (2月18日 11時) (レス) id: b90a85c5d8 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃむ - 題名に釣られて来ちまったよぉ…なんでこんな神作思い付くんです??続き楽しみに待ってますっ!!あとこれって原作のどこらへんで起きてる話ですか? (2月14日 9時) (レス) @page12 id: b02cacdca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らんぬ | 作成日時:2024年2月11日 23時