HiMEた心のアリアドネ (ページ1)

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「貴方のせいだったのですね」

『さぁ？何の話だ？』

「とぼけないでください、HiMERUはもう全て知っています。」

『だったらなんだ。こんなところまで追い詰められて、一体お前に何ができる』

ヒュウと酷く冷えた風が足元を抜ける。ESビルのある都会から離れた人気のない岩場にいるのは、黒いスーツを着た男とそれを威嚇するように睨みつけるHiMERUの2人。
HiMERUのすぐ後ろには何もかも飲み込んでしまいそうなほどの暗闇に包まれた深い崖が広がっている。

「あの子は……要は過労死なんかじゃない。そもそもおかしなことばかりだったのです。体の弱い要があんなにもハードなスケジュールをこなしていたことも、病院へ行く回数が減ったことも。全て、貴方が仕組んだことなのですね。貴方達上層部がきちんと治療に専念させていれば要が死ぬことはなかった！」

HiMERUは先程よりも目をつり上げ男を睨む。

「しかも世間へはファンのために生涯を捧げた"悲劇のアイドル"として発表されている……HiMERUはそれが許せないのです……！」

『だから何なんだ。あいつは死んだが沢山稼いだ。その金でこの会社は回るしお前もアイドルを続けられる。一石二鳥だろう？』

「貴様…………っ！」

怒りが頂点まで達したHiMERUが男に掴みかかろうとしたとき、横から現れた同じ黒いスーツを着た男たちに思い切り後ろへ押された。バランスを崩した拍子に後ろへ引いた足は地面を空回りし、そのまま体ごと崖の下へ引っ張られる。
「あぁ要……HiMERUは兄失格でしょうか……」
静かに呟いた言葉は誰の耳へも届くことはなかった。