不幸にならないで【東リべ】 (ページ3)

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千冬said

出会ったのは、中1の冬。

場地さんの紹介だった。

「千冬、コイツ、A。一応副総長。」

『あ"ぁ！？一応ってなんだよ！普通に副総長だわっ！！』

「まッ、松野千冬です。よ、よろしくお願いします！」

場地さんのお友達だし、
しっかりしようとしすぎて声も裏返って変な挨拶になったのを、

『んな、かしこまんなくていいよ～w』

お日様みたいな笑顔で返してくれた。

でも、Aさんは殆ど集会に来ないからたまに会った時に話すくらいだった。

…場地さんが初めて集会を出禁になった日。

1人で集会に行こうとしたら公園で誰かが歌っていた。

俺はすぐにAさんだってわかった。

何でこんな時間に…？

特服も着ないで…？

疑問に思って見ていたら、

Aさんの頬に雫がついていてキラキラ光っていた。

…この人を知りたい。

と思った。

『……千冬、、？』

控えめに出された声はいつもの男らしい声ではなく、ちゃんと女子の声だった。

「は、はいっ！…え、えっと、集会行かないんすか？」

『……ウン、。もうすぐ行かなきゃだから。』

他の人達は

弱々しい声を出すこの人を、

寂しそうな雰囲気のこの人を、

いつもの明るくて元気なAさんじゃないAさんを、

知っているのだろうか。

それから時々この公園の近くを通ったりして探した。

毎回は居なかったけど、たまに

チビ達に歌を歌ってたり、

リコーダーを吹いてたり、

ピアニカを弾いたりしていた。

俺が頼んでも歌ってくんねぇから、貴重で、すげぇ楽しい時間だった。

Aさんはよく、くしゃっと頭を撫でてくれて、それが俺は凄くすごく嬉しかった。

『千冬～見えてんぞ～』

貴方の声が木霊する。

優しい歌が。
悲しい音色が。
目を細めて頭を撫でる表情が。

貴方がずっと寂しそうだったのは、そういう事だったんですね…。