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「では、今日はこれまで。明日も元気な顔を見せてくれ。」
先生は言い終えると、翔を見て笑った。
「砂原、明日は、教室で寝るなよ。」
翔はその言葉に、ムッとしたような顔をする。先生、翔煽るのやめてくださーい。
「困ったことや相談事がある人は、職員室まで来なさい。じゃ。」
私たち生徒は、先生が出て行ったのを確認し、動き出す。私も自分のバッグを持つと、立ち上がって翔の前に立った。
「翔、家どっち？」
「右。」
「よし、じゃ、帰ろ。」
立花は既に教室を出ていて、相川は友達と帰るそうだ。
「ありがとな、さっきの。嬉しかった。」
「別に、本心だから。」
翔はそれを聞くと、嬉しそうに口角を上げた。
「······おい、愛しの黒木だぜ。」
翔と肩を並べて昇降口まで歩き、靴を履き替えて外に出ると、ふと、翔が言った。顔をあげれば、緋色のウインドブレーカーを羽織った貴和が、立花に絡んでいるところだった。
「行って来るか？」
「え、いい。」
「なんで？」
「もう、好きじゃないし······」
いや、ウソだけどね。でも、私と貴和じゃ合わないから。貴和は友好関係に口は出されたくないと思うし、縛られるという行為が嫌いだと思う。でも、私は貴和には私以外の女の人と関わらないでほしいって思うし、行動は常に把握しておきたい。
幸せが崩れるのは一瞬だから、少しでも多く、好きな人を感じていたい······こんな考え方をしている私は、絶対、貴和と合わない。だから、私は、この恋を諦めよう······って、思う。
「そ。じゃ、行こうぜ。」
私はうなずくと、翔と同じタイミングで足を踏み出した。立花に絡んでいた貴和は上杉に追い払われたらしく、チームメイトと一緒にグラウンドの方に走っていく。
貴和を追い払った上杉は、立花と何かを話していた。女嫌いの上杉が女と話すなんて······意外。思わずその様子をじ······っと見ていると、ふいに顔を上げた上杉と目が合った。
翔も上杉と目が合ったらしく、翔は上杉に「よっ！」と片手をあげた。私も同じように「お久〜」と手をあげ、そこを通り過ぎる。
せっかくの、上杉の恋だ······邪魔しちゃ悪いよね。うん。
「家まで、送る。」
「ありがとう。」
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作者名：魑魅@亀更新 | 作成日時：2022年12月4日 23時
