芭流覇羅 ページ23
氷秋side
俺に捨てないでと縋る母親も、
消えろと必死に俺を殺そうとする母親も、
全部オレにじゃない。
オレの親はオレなんて見えなかったから、、
ｷｨ
家の古い扉は音を立てて開く、
これはオレじゃない俺の記憶。
「どこ行ってたの？」
奥からボサボサな頭をした
『…また、絡まれてた。』
「もしあなたがいない間に私が襲われてたらどうするつもりだったの？あなたが私を守るんでしょ？」
きっと今この女は不機嫌だ。
また男に振られたのか…
借金取りから追われている
面倒臭い…
"素直になれ！！"
真一郎の言葉が頭をよぎる。
『嫌だ、』
「え？」
『もう借金取りの相手なんてしたくない。』
「どうして……どうして！！！！？」
『っ、』
いつも自分の体に傷をつけることを嫌っている
コイツは少し物怖じする、
自分の母親のその態度にじゃない。表情に恐怖した。
いつも蔑んだ目で見てくる
罪悪感に溺れた目をして謝る
空っぽになった目の
承認欲に狂っていった
「私は……あなたがいないとダメなのに、」
自分に見向きもせず死んだコイツの父親を心から愛していた女は、
「あなたに捨てられたら私は……、どうしたら愛してくれる？どうしたら見てくれる？どうしたら私を求めてくれる？
私が死ねば悲しんでくれる？」
コイツに縋るようにして肩を掴む
あぁ、俺は…いい気になっていた。
嫌だと言うだけで終わるほど簡単ではなくなっていたんだ、
コイツの気持ちが嫌でも流れ込んでくる。
くだらない…
「待ってて、今そこに行くから…」
割れた花瓶を掴んで呟く
首に差し込み
床に溜まる血、青ざめていく
まるで世界にコイツしかいないみたいに静かに変わっていく。
くだらない
俺は…真一郎みたいに"強く"なかった。
なれるわけがない。だって"オレ達"は紛い物だろう？
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