主と岩融「花見と目線」 ページ11
執務続きで息が詰まりそうなときは、いつも庭で花見をする。
桜が年中咲いているこの不思議な庭では、鳥が賑やかに歌っている。
桜の木の根元に腰かけその声に耳を傾ければ、遠くからは短刀たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
この仮初の平和が永遠に続けばいいのに…なんて考えたりして、噛み締めるように目を閉じた。
ふと「主よ」と私を呼ぶ声がして、そのほうを振り返れば、にこにこしながらこちらへ歩み寄ってくる彼の姿。
「岩融、こんにちは。」
そう言って自分よりもかなり背の高い彼を見上げれば、花見かと質問される。
「ええ、最近ゆっくりする暇がなかったから、息抜きを兼ねてちょっとね。
…ふふ、それにしても貴方は本当に背が高いのね、頭が花に埋もれてしまいそうだわ」
桜の枝に額をぶつけて煩わしそうにしている姿を見て、思わず口許を緩める。
つられて笑った岩融がふと何かを考えるそぶりをしたあと、閃いた!と言わんばかりの表情を浮かべて私の目の高さになるようにしゃがんだ。
「主も花に埋まりたいか?」
にっと笑って提案する様は、どこか短刀たちの姿と重なって見えた。
大柄な彼は見た目とは違い意外と可愛い一面がある。
「もちろん、できることならそこにどんな景色があるか見てみたいわ」
岩融から桜に目を移しながら返事をすれば、近付いてくる衣擦れの音がした。
「ならば俺の肩に乗せてやろう」
不意に聞こえた声と同時に体が宙に浮く感覚。
岩融はときに突拍子もない行動をとる。
それは鶴丸国永のそれと少し似ているけれど、彼の場合は故意に取る行動ではない分、予測がしづらい。
私が肩に担がれたのだと理解するには少しばかり時間がかかった。
「きゃっ!こら岩融!放り投げて担ぐのは危ないと前にも…!」
びっくりして岩融の背中にしがみついて動けずにいると、前を見てみろと声がかかる。
話を聞いてくれなかったことに少し不満を抱きつつも、言われたとおりに前方を見れば、あたり一面が桜色に染まっていた。
思わず感嘆の声を漏らすと、クツクツと笑い声がした。
「こうすれば、主も埋まってしまうなあ!」
「きれい、こんな景色が貴方には見えていたのね…素敵」
「そうであろう、主の目線で見る景色もいいが、ここからでしか見ることのできない景色もある。」
他人の目線になる、たまにはいいかもしれないと思えた。
今度は俵担ぎされてない状態で見てみたいわ
それはまた今度だな
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悟空の頭撫で隊(プロフ) - ユキさん» たいへん申し訳ありませんでした!!Twitterのほう拝見させてもらいます!! (2019年4月8日 20時) (レス) id: 54631da30d (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 悟空の頭撫で隊さん» ご感想ならびにリクエストありがとうございます。申し訳ありませんが、説明文に記載しましたとおり更新は終えましたので、現在リクエストは受け付けておりません。機会がありましたらTwitterの方では書いてみようと思います。読んでいただきありがとうございました。 (2019年4月8日 15時) (レス) id: a6147e044e (このIDを非表示/違反報告)
悟空の頭撫で隊(プロフ) - とってもおもしろかったです!リクエストで、むっちゃんとの絡みお願いします!! (2019年4月8日 14時) (レス) id: 54631da30d (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 煉獄さん» ご感想ありがとうございます!元持ち主の子孫というだけでも誇りに思いますよね(笑)似たような方にお会いできて光栄です、今後ともよろしくお願いいたします。 (2015年9月5日 14時) (レス) id: 670af7272b (このIDを非表示/違反報告)
煉獄(プロフ) - ほのぼのしていていいですね。更新楽しみにしています。因みに、私の祖先は御手杵の元主の一族らしいので親近感湧きます! (2015年9月5日 14時) (レス) id: 3b23ac9322 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏芽 幸 | 作成日時:2015年7月4日 21時