【刀剣乱舞】伍・生まれ育った本丸、何かブラックにされたらしいんでちょっと行ってきます。

＃百九十六振り目 ページ5

・



呆けたような山姥切の返答。
その視線が、そのまますうっと私から私の背後にずれる。

すごく、滑らかな動きで。


あれ？私の後ろって誰かいたっけ？
...そう思ってから、激しく後悔した。


ヤバい、面倒くさくなる予感しかしない。←




「...へし切、長谷部？」

『おおおっとちょっと待ってまんば！それに伽羅も鶴丸も！いやあのね、これには海より深い訳があってですね！』




彼らは知っている。
私が最初に本丸に足を踏み入れた時、長谷部が私に刀を向けた事を。

山姥切が何か言いかけて、...飲み込む。

驚きと困惑が入り混じったような表情だった。

鶴丸も同じような感じ。


そして、そんな山姥切や鶴丸よりもはっきりとした表情を浮かべた男士が一人。

予想は、言わなくても簡単につくだろう。




「お前...。どの面下げてAの近くに...！！」

『だあああッ！やだやだ、こんなとこで戦い始めないでよ伽羅！？言ってんじゃんこれには訳があるって！』




かなりの怒りを滲ませながら、そいつは―――伽羅は、長谷部に詰め寄ろうとする。

身長差はそこまでないけど、力の差は結構ある私と伽羅。
...全身を使って制止したはいいものの、それだけでだいぶ息が切れた。


ちょ、こいつ着痩せしてるだけでむっちゃ筋肉ついとるやんけ...！←




『ま、だからちょ、お、落ち着いてってば！...ぐう...！んの怪力竜王...！』

「退けA！こいつは無警戒に近くに置いておけるような奴では―――」

「...すまない」

『「......！？」』




ここに来て初めて、長谷部の声を聞いた。
はっと顔を上げ、彼を見る。

―――うつむいた藤色の瞳が、微かに揺れていた。




「俺は...」

「―――へし切よ」




長谷部が何かを言おうとする。

しかしそれより早く、三日月が口を挟んだ。




「今はAの言う通り時間がない。話をつけるためにも、取りあえず、大倶利伽羅は刀を仕舞え」

「っ、だが！！」

「...仕舞うのだ、若き竜よ」

「！...くそ、」


『...わお』





静かな声音が、耳朶を打つ。
小さく舌打ちしてから、伽羅は三日月に言われた通り、渋々刀を収めた。

あ、あの大倶利伽羅が...。

平安じいちゃんすごい...、と思いつつ、事の成り行きを眺める。




「さて落ち着いたな。今一度問おうへし切長谷部。

俺からの質問はただ一つだ。


―――お前は、"Aと共に戦うのか？"」





三日月の、淡々とした口調。

本丸の屋根上が、水を打ったように静まり返った。





・

＃百九十七振り目→←＃百九十五振り目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す