第 1 話 受験 ページ2
私はヒーローに憧れた。
笑って人々を助け出して、平和の象徴と呼ばれるようになった、最高のヒーローが。
･･･私は、ヒーローが嫌いだ。
自分の命を犠牲に他を救い出し、小さな子供を泣かせた、あのヒーローが･･･。
親を無くした小さな妹1人を残し、仕事をし続けた、あのヒーローが･･･。
悪に染った、ヒーローが･･･。
ヒーローに、なりたいと思った。
憧れの人のように笑って人を救えるようになりたい。
ヒーローに、なりたくないと思った。
･･･誰かを悲しませるような人に、なりたくない。
泣いてる子を放ってヒーロー活動するような人に･･･。
悪に染り、自分の子供に手を出すようなヒーローに、なりたくない。
･･･この矛盾が･･･日に日に大きくなっていく･･･。
☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆
貴｢････受験･･･かぁ〜･･･｣
中学3年の冬。
受験シーズン真っ只中のこの時期、このことを考えずにはいられなかった。
他の人、どこ受けるんだろ･･･気になる･･･。
男１｢お前どこ受けんの〜？｣
男２｢俺？○○高のヒーロー科！｣
男１｢え、そこに行くのかよ〜！俺士傑高校〜！｣
進路希望の紙とにらめっこしながら、周囲に聞き耳を立てると、ほとんどの人がヒーロー科志望のようだ。
進路希望の紙が手元にないのはもう既に先生に提出しているからなのだろう･･･。
進路希望をそんなに簡単に出していいわけ？
自分の人生の分岐点だよ？選択早すぎじゃない？
男１｢は、なになに？隣の組の口田、雄英受けんの？マジか！？｣
男２｢らしいぜ、あいつ意外と頭いいからな〜｣
男１｢意外とは失礼じゃね？｣
貴｢･･･雄、英･･･｣
耳に入ってきた“雄英”という単語に顔を上げる。
雄英高校･･･あの人が･･･あの人たちが、通っていた高校。
貴｢･･･････｣
私は目を閉じて数秒考えてから、ペンをとり白紙だった進路希望用紙に文字を走らせた。
“雄英高校、普通科”と。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：青谷地 桜華 | 作成日時：2019年4月20日 22時
